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コロナ後の消費者行動、続くものと消えるもの

 

新型コロナウイルスのパンデミックは米国人の食事の仕方、買い物の方法、娯楽の手段を大きく変えた。ともかくも消費行動のほとんどは自宅やオンラインに移行した。

 効果的なワクチンのめどがたった今、コロナ後の世界を見据える者にとって一番重要な問いは、元に戻らないものがどれくらいあるかだ。消費者がパンデミック期間中に取った解決策が本物に劣る場合、消費行動はたちまち元に戻るだろう。例えばビデオ会議システム「ズーム」を通じた飲み会は実際に夜の街に繰り出しての飲み会にはかなわない。しかし他のケースでは、あえてスーパーに行くより食料品を配達してもらうなど、消費者がこれまでの活動より優れた方法を見いだしている可能性もある。

 フィットネスや映画などさらに別のケースでは、これまでも対面と在宅が競い合っていた。例えば昨年、米国内で販売された映画のチケットは12億枚超で、動画ストリーミングサービスが急増したにもかかわらず、5年前とほぼ同水準だった。さらに興行収入追跡サービスのザ・ナンバーズによると、チケット価格の平均は同じ期間に12%上昇した。

 これらのセクターにとってさらに大きな問題は、需要が戻って来たときにどの企業が生き残って需要に応えるか、という問題かもしれない。24アワー・フィットネスやゴールドジムなど複数のスポーツクラブチェーンのほか、サイクフィットネスやフライウィール・スポーツ、ヨガワークスなど専門分野に特化したスポーツクラブも破産法の適用を申請した。劇場チェーンではAMCエンターテインメントが来年の夏まで生き残れるように追加の資本を調達する必要があることを明らかにした。ハリウッドは公開を延期した大作映画の多くを来夏に劇場公開する意向だ。

 パンデミックが始まってから身につけた習慣の一部はそのまま残る可能性が高い。多くの人が料理の習慣を身につけることを迫られ、もともと料理が得意だった人は腕に磨きがかかった。これはゼネラル・ミルズ、キャンベル・スープ、マコーミックなどの食品会社にとっては朗報だ。

 消費者調査会社NPDによると、3月15日から10月31日の間に購入された食事の準備や調理、保存に使う機器の金額は前年同期比で41%増加した。オーブン料理用の金属製調理機器の販売額は57%増、オーブントースターは75%増、ノンフライヤーは83%増だった。

小売店では超大型小売店のウォルマートやターゲット、コストコがパンデミックによる最大の勝者に含まれる。例えばウォルマートでは7月31日までの半年間で米国国内での雑貨の売上高が10%以上増え、前年同期の1%増を大きく上回った。さまざまな意味でこうした巨大な販売店は百貨店のようになり始めている。ターゲットはリーバイスの商品を扱う店舗を増やす予定で、来年には化粧品小売店のアルタ・ビューティーがターゲットの一部の店舗に出店する。

 しかし当の百貨店は消費者に提供するべき自らの価値をますますつかむことができなくなっているようだ。10月31日までの四半期の売上高はメーシーズが前年同期比で23%減、コールズは13%減だった。これに対して、ディスカウントストアのTJXやロス・ストアーズは電子商取引ではほとんど販売を行っていないにもかかわらず、売上高の減少幅はそれぞれ3.2%と2.4%にとどまった。ディスカウントストアでの「宝探し」体験の魅力がパンデミックの期間を持ちこたえれば、特に経済が引き続き低迷した場合、パンデミック後も確実に共感を呼ぶだろう。

 実店舗で展開する小売業の一部のカテゴリーは初めてオンライン業者との本格的な競争に直面している。例えば家具は商品を直接見たい消費者が圧倒的に多いカテゴリーだったが、消費者はその心理的な障壁を突破した。家具のオンライン販売を手掛けるウェイフェアの売上高は9月30日までの半年間で75%以上伸びた。同様に中古車のオンライン販売も好調で、シフト・テクノロジーズとブルームの新興2社は株式公開を果たし、カーマックスなどの既存企業はオンラインへの進出を急いでいる。こうしたセクターの小売業者はもはや電子商取引の脅威を無視できない。

 運がよければ米国では来年の夏にはバーや映画館に人々が再び押し寄せるだろう。しかし多くの小売業者は、飛び出してしまったパンデミックの精霊をボトルに戻すことはできない。物事がパンデミック前と同じ状態に戻ることはない。

以上、Wall Street  Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/what-stays-and-what-goes-in-a-post-covid-19-world-11606127403?mod=searchresults_pos1&page=1

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