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5G巡る米中対決、ネットワークの規模と一貫性で中国が先行

 

中国は第5世代移動通信システム(5G)を巡る競争で、もはや多くの点で米国をリードしているだけではなく、大差をつけている。

 中国は5G契約者に関して、総数だけでなく普及率でも米国を上回っている。販売されている5G対応のスマートフォンの数も多く、価格も安い。国内の5G利用可能範囲も広い。国内の平均通信速度も米国を上回っている。

 5Gが単なる進化ではなく革命をもたらすと言われているゆえん、すなわち、超高速・大容量通信によって可能になる応用分野については、中国の首位の座はさほど盤石ではない。自動運転車や遠隔手術、工場生産自動化などの世の中を一転させるような応用分野については、米中ともに普及にはまだ数年かかる。しかし、中国は5Gネットワークの敷設で先行しているため、そうした点でもいずれ米国に大きく水をあける可能性がある。

 投資銀行ジェフリーズの通信業界アナリスト(香港在勤)、エディソン・リー氏は、5Gによって消費者と産業にもたらされているメリットの全容については、米中でまだ大差はないとみている。しかし、「その進ちょく具合をネットワークの敷設状況でみた場合、中国がはるかに先を行っている」とリー氏は述べた。

 中国が確実に優位に立っているのが、5Gの根本的な部分だ。調査会社インターナショナル・ビジネス・ストラテジーズのハンデル・ジョーンズ最高経営責任者(CEO)によると、中国国内の5G基地局数は年内に推定69万基になる見通しで、米国の5万基を大幅に上回っている。

 この優位は、中国のスマホメーカーがいち早く5G対応スマホの発売に乗り出す後押しになっている。アップルは初の5Gスマホを先月発売したばかりだ。調査会社カナリスによると、米国の消費者が9月時点で選べる5Gスマホはわずか16機種であったのに対して、中国の消費者は86機種だった。

 中国では5Gスマホの価格も米国より安い。カナリスによると、4-6月期の平均価格は458ドル(約4万8000円)と米国の1079ドルを大幅に下回っている。

中央計画制

 中国が5G網の敷設と普及で先行している主因は、政府の強力な介入にあるとアナリストはみている。中国政府は国営通信3社に対し、5Gの接続数について意欲的な目標を課している。中国国内の5G通信設備市場の大部分は華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の2大通信機器会社が占めている。しかし、スウェーデンの同業エリクソンは先月、7-9月期の調整後売上高が7%増となった主因に中国の5G契約を挙げていた。

 調査会社CCSインサイトの調査ディレクター、ウェイン・ラム氏は、トップダウン方式のおかげで、米国と比較して中国の5Gのカバー範囲は均一でスピードも一貫性があると指摘する。中国のアプローチの裏には「多くの中央計画がある」という。

 それに対し、米国の5Gのカバーエリアは細分化されており、スピードもばらつきがある。例えば、米国では競技場など一部の大勢が集まる場所では「ミリ波」と呼ばれる超高速5G(中国ではまだ一般の消費者には提供されていない)が利用可能だが、それ以外の場所では5Gのスピードはもっと遅い。

 ジェフリーズのリー氏によると、5Gの強みを生かしたサービスの展開を加速させるため、中国はさまざまな応用分野を試し、さまざまな業界に5Gの用途の検討を促している。例えば、ファーウェイは一例として、5Gで新型コロナウイルス感染症の遠隔診断が可能になるとうたっている。また、国営石炭会社、山東能源集団は先月、5Gネットワークを利用して地下の深い場所にある炭鉱にデータを送信する計画を明らかにした。

 こうした応用はまだ始まったばかりで、経済的に広い普及が可能かどうかは分からないとアナリストは指摘する。「商用化に関しては、まだ実現していない」とリー氏は述べた。

課題

 一方、中国の5Gネットワークの展開にも問題がないわけではない。ファーウェイの通信事業部門トップを務めるライアン・ディン氏は中国で先月行われた業界イベントで、同国の5Gネットワークのカバー率が人口のわずか8%にとどまると明らかにした。これに対し、韓国では5Gのカバー率は人口の25%だ。また、中国の5Gネットワークは韓国やスイスなどと比較してスピードも遅いという。

 ディン氏によると、中国のスマホには4Gにしか対応しておらず、4Gと5Gネットワークの間で頻繁に切り替わるにもかかわらず、ディスプレーに5Gのロゴが入っているものもある。

 「現時点で、中国は世界最大の5Gネットワークを構築している」とディン氏は述べた上で、韓国やスイスなど5Gで先端を行く一部の国と比較して中国にはまだ改善の余地があると指摘した。

 一方、CCSインサイトのラム氏は、中国が大規模かつ高速で一貫性のある5Gネットワークの基礎作りに成功している点を指摘。米国の5Gと比較して「カバー範囲と進展度という基準からみて、中国が優勢だ」と述べた。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/u-s-vs-china-in-5g-the-battle-isnt-even-close-11604959200?mod=searchresults_pos1&page=1

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