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米国CEO、解任ラッシュに直面。CEOの深い苦悩とは

 

「報酬は素晴らしいが、雇用保障はめったにないほど不安定」。米国有数の規模と知名度を持つ企業の最高経営責任者(CEO)らは今年、この教訓を学びつつある。

6月だけでも、 ゼネラル・エレクトリック (GE)、ウーバー・テクノロジーズ、 ワールプール 、バッファロー・ワイルド・ウィングス、ペリゴ、パンドラ・メディアのCEOが辞任したか、または辞意を表明した。このうち、辞任の意向を発表するまでの数カ月間に投資家から圧力を受けずに済んだのは、家電大手ワールプールのジェフ・フェッティグCEOだけだった。

今年1~5月には、時価総額400億ドル(約4兆5200億円)超の企業13社( アメリカン・インターナショナル・グループ 、 フォード・モーター 、キャタピラーなど)が新しいCEOを迎えた。前年同期の2倍以上だ。

このCEO交代ラッシュは、米国の企業エリートを取り巻く現実を大きく反映している。企業幹部によれば、投資家や役員がますます短気になり、新たな技術や競合新興企業によって企業環境が急変するといった一連の課題のために、CEOの職務はほんの数年前と比べても激務かつ不安定になっている。最大手企業でさえ株主の反対や競合他社に対して脆弱(ぜいじゃく)だ。

10年前の大手企業の典型的なCEOは船長に似ていたと、企業のリーダーシップ開発を手掛けるRHRインターナショナルのシニアパートナー、デボラ・ルービン氏は語る。一方、「今日のCEOはレーシングドライバーに近くなければならない。俊敏なハンドルさばきが求められる」という。

かつてないほど潤沢なキャッシュを手に、アクティビスト(物言う株主)はますます大きな獲物となる企業を追い求めている。彼らは今年、AIG、鉄道大手CSX、アルミ部品メーカーのアルコニックのCEO辞任に一役買った。実際、今年1~5月にCEOが交代したS&P500企業およびフォーチュン500企業42社のうち3分の1は、前CEO時代にアクティビスト株主の要求に追われていた。アクティビストは今年、6月23日時点までに米企業の経営陣を標的にしたキャンペーンを9件開始しているが、これは2014年以降で最速のペースだ。

GEのジェフ・イメルト氏(61)が今年夏にCEOを退くと発表されたのでさえ、同社株価の低迷でアクティビストのネルソン・ペルツ氏との緊張が高まっていた最中だった。この退任への動きは長らく進められていた移行の一環だったが、イメルトCEOが辞任する時期について憶測が飛び交い始めたのは、ペルツ氏のトライアン・ファンド・マネジメントがGEに一段と積極的なコスト削減と増益を求める圧力を強めたのがきっかけだった。イメルト氏は16年務めたCEOを今年で辞める決断を下したのは2013年だと話しており、GEの取締役会関係者は今回の交代にトライアンは関与していないと述べている。イメルト氏は先週コロラド州でのイベントで、「前任者は(CEOを)20年務めた。今日では20年続ける職務ではない」と述べた。

新しい技術と消える市場

目先の業績を求める株主の声が高まっているのは、新しい技術が全ての産業をひっくり返しつつあるためだ。例えば小売企業の経営者なら、対象の市場全体がわずか数年で消えていく過程を目にしている。そうした小売業者であるJクルー・グループとメイシーズは、ネットショッピングが生んだ消費者のシフトやこれまでより迅速なサプライチェーンを持つ新興企業への対応で苦戦、最近新たなCEOを任命した。Jクルーのミッキー・ドレクスラー前CEOとメイシーズのテリー・ランドグレン前CEOはそれぞれ会長職にはとどまっている。

同様に、フォードが就任3年足らずのマーク・フィールズCEOの解任を決めたことは、電気自動車メーカーの テスラ やアルファベットの自動運転車部門ウェイモといったテクノロジー企業が従来の自動車業界をいかに脅かしているかを最も鮮明に示した事例だ。フィールズ氏は数年の準備期間を経てCEOに昇格したが、投資家が改革のペースに納得しなかったことから、他の取締役らが速やかに交代を決めた。退社は8月の予定。医療機器大手 メドトロニック でCEOを務めた経験を持つハーバード・ビジネス・スクールのビル・ジョージ教授は、フィールズ氏がフォードで要求されたような仕事をするには「時間が短すぎる」と述べた。知り合いのCEO数人が「自分にはどれだけ時間があるか」と自問しているという。

解任ラッシュ

米国でも有数の大企業・有名企業でCEOの解任が続いている。過去1年間で発表された辞任・解任を抜粋する。

辞任するCEO
企業
物言う株主の関与
業界が変革期
継承計画
Kleinfeld, Klaus Arconic x
Smith, Sally Buffalo Wild Wings x x
Oberhelman, Doug Caterpillar x x
Kent, Muhtar Coca-Cola x x
Ward, Michael CSX x
Dickerson, Chad Etsy x
Fields, Mark Ford x
Immelt, Jeff General Electric x x
Powell, Ken General Mills x x
Bilbrey, J.P. Hershey x x
Drexler, Mickey J.Crew Group x x
Lundgren, Terry Macy's x x
Westergren, Tim Pandora Media x
Hendrickson, John Perrigo Company x
Schultz, Howard Starbucks x
Cumenal, Frederic Tiffany & Co. x
Longhi, Mario U.S. Steel x
Chambers, James Weight Watchers International x
Fettig, Jeff Whirlpool

 

日本企業のCEOを取り巻く環境は米国とは大きく異なる。グローバル市場で新技術との競争に晒されているのは、例えば日本の自動車会社も同じだが、アクティビストからのプレッシャーは少ない。その分CEOはじっくりと長期的戦略を練ることができる。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

https://www.wsj.com/articles/the-angst-of-endangered-ceos-how-much-time-do-i-have-1499247002

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