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米コーヒー市場は飽和状態、淘汰されるカフェ

 

米国のコーヒー市場はもう飽和状態になっている。

カフェインや上質なコーヒーを求める消費者の嗜好を背景に、過去5年間でカフェブームが起き、特にニューヨークやサンフランシスコ、オレゴン州ポートランドといった人口の多い大都市圏で急増してきた。市場調査会社ミンテルによると、米国には現在、大手チェーンの スターバックス などを含め、約3万3000軒のコーヒーショップがある。5年前に比べて16%増えた。

 コーヒーショップの急増は、経営者を徐々に苦しめている。消費者はより安価な選択肢が増えたため、伝統的なコーヒーショップに行く回数が減っている。マクドナルドからガソリンスタンドに至るまで、どの店も「こだわりの本格コーヒー」を売り物にし始めた。食料品店も専用スペースを設け、ボトル入りや缶入りのコーヒー飲料を提供し始めている。スターバックスなど大手コーヒーチェーンの来客数の伸びは鈍化しており、小規模なコーヒーチェーンや独立系ショップの来客数は減少傾向にある。

ロサンゼルスのすぐ北にある シェブロン のガソリンスタンドでは、カップ1杯のコーヒーが1.49ドル(約170円)で飲める。これに対し、2キロも離れていないスターバックスの店舗では、スペシャルティコーヒーの値段がおよそ5ドルする。近くの食料品店では、ダンキンドーナツが製造するボトル入りのアイスコーヒーが2.89ドルで買える。

コーヒービジネスが直面する課題は、食品小売業や外食産業が苦しんでいる状況と似ている。過剰な販売スペースを抱えたまま、新たに広がる多様な選択肢と競い合っているのだ。さらに、ショッピングモールでの買い物を控える傾向があるほか、在宅ワーカーや勤務時間中にオフィス内にとどまる人が増えたことで、消費者がコーヒーショップに足を運ぶ頻度は減っている。

「これ以上コーヒーショップが増える余地はない」とNPDのアナリスト、ボニー・リグス氏は指摘する。

ダンキンドーナツは最近、新規出店を抑える方針を明らかにした。店内で食べずに持ち帰る客のニーズに対応するため、店舗設計を見直すことに力を入れるという。米国のコーヒーショップの約42%を占めるスターバックスは、出店ペースを落とす予定はないとした。ただ、同社は先週、売上高と利益の長期的な成長率見通しを下方修正し、厳しい販売環境をその原因に挙げた。

米国のコーヒーショップの店舗総数は今年2%余り増え、過去6年間で最も低い伸びとなる見通し。大手が中小の同業者をのみ込むなどの業界再編も一段と進むとみられる。欧州の投資会社JABホールディングス・カンパニーはここ数年、米国のコーヒー事業を買いあさっている。すでにキューリグ・グリーン・マウンテンやピーツ・コーヒーを買収。そのピーツはインテリジェンツィア・コーヒー&ティーやスタンプタウン・コーヒー・ロースターズの株式の過半数を取得した。スイスの食品大手ネスレは9月、ブルー・ボトル・コーヒーの株式の過半数を買い取り、傘下に収めた。

かつては高い利益率を誇った小さなコーヒーショップへの影響は特に深刻だ。不動産や人件費などのコスト上昇に耐えきれず、閉店するケースも増えている。

飲食店が集まるピッツバーグのストリップ地区で11年前にコーヒーショップを始めたシェーファー夫妻は、賃貸契約の更新時に家主が家賃を引き上げると通告したため、新たな場所を探そうと考えている。「大手のコーヒーチェーンなら高い家賃も払えるし、弁護士を雇って賃貸契約の交渉をしたり、もっと良い場所に店を構えたりできるだろう」とシェーファー夫人は話す。夫妻によると利益は依然出ており、売り上げも安定しているが、もともと厳しいビジネスが競争の高まりによって一段と難しくなったという。

大手チェーンの場合、消費者からのさらなる利便性への要求に比較的容易に対応できることが大きな利点だ。最新式のモバイルアプリを開発し、ドライブスルーの通路を設け、ボトル入りの飲料を提供するといったことだ。

「人々はますますせっかちで、怠惰になっていると言える」。ダンキン・ブランズ・グループのナイジェル・トラビスCEOはこう指摘し、「中小のチェーンは淘汰(とうた)されるだろう」と予想する。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

https://www.wsj.com/articles/american-retail-has-a-coffee-problem-1510056002

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