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変わる電力源の勢力図、負け組は石炭と原子力

 

米トランプ大統領がパリ協定を脱退を高らかに発表したのは記憶に新しい。しかしトランプ大統領がどんなに米国の石炭産業を守ろうとしても、時代の流れは変えられないようだ。石炭と原子力による発電量は減る傾向にある。石炭はともかく、原子力発電所建設は日本産業の強みでもあるため、影響は無視できない。

2005年頃、米国とカナダの国境に位置するスペリオル湖の西岸にある紙パルプ工場と鉄鉱石生産会社は、使用する電力の98%を石炭火力発電に頼っていた。だが今や石炭による発電は大幅に減少し、25年までにはこの地域の電力供給に占めるシェアは3分の1程度に落ち込むとみられている。

地元の電力会社ミネソタ・パワーが6月に発表した計画によると、同社の発電の44%を風力など再生可能エネルギーが占める見通しだという。また、高性能の天然ガス火力発電所の建設を計画する一方で、石炭火力発電所8カ所のうち6カ所をすでに閉鎖した。

米国の発電業界全般がこうした傾向にある中、これは極端な例だが、天然ガス、風力、太陽光による発電が急速に拡大する一方、石炭と原子力による発電は縮小している。

だが、トランプ政権は石炭発電の復活を後押しする意向を示している。6日にはトランプ氏が「米国の原子力発電セクターを復活させ拡大したい」とし、政策の見直しを発表した。米国の電力需要は増えていないため、石炭と原子力による発電を推進すれば、天然ガスと再生可能エネルギーによる発電を縮小することになる。逆もまたしかりだ。米政府の新たな政策は石炭と原子力を復活させるのか、それとも天然ガスと再生可能エネルギーが引き続きシェアを拡大するのか。対決の舞台は整った。

電力源の構成を変えているのはミネソタ・パワーのような小規模の電力会社だけではない。

ノースカロライナ州シャーロットに本拠を置き、5つの州に発電所を持つ デューク・エナジー は、05年には発電量のうち天然ガスと再生可能エネルギーが占める割合は7%だった。その割合は昨年32%に増え、26年までに44%に達すると予想している。

6月には、 バークシャー・ハザウェイ ・エナジー傘下の電力会社パシフィコープが、風力と太陽光による発電に136億ドル(約1兆5500億円)を投じる計画を明らかにした。同社はこうしたプロジェクトについて「向こう20年にわたる顧客のエネルギー需要に応えるための最もコスト効率の良い選択肢だ」と述べている。

米エネルギー情報局(EIA)によると、天然ガス、風力、太陽光による発電が米電力需要を満たす割合は10年前の22%から40%に拡大した。

天然ガスと再生可能エネルギーによる発電が増える一方で、長年米国の発電の中核だった石炭による発電はここ数年、大幅に縮小している。過去5年間に、石炭火力発電所10カ所につき3カ所が閉鎖された。

過去数十年にわたりもう一つの中核だった原子力発電も危うい状況にある。原子力発電所は10年前の65カ所から23年までに54カ所に減る可能性がある。電力会社は、閉鎖する原発を減らすには新たな補助金を受ける以外に方法はないと主張している。

石炭と原子力による発電は長年、天候や時間にかかわらず継続的に一定の電力を供給できる信頼性の高い電源、いわゆるベースロード電源の役割を果たしてきた。だが天然ガスと再生可能エネルギーによる発電が増えるにつれ、一部では電力の供給が不安定になるのではないかと懸念されている。

こうした変化の主な要因は天然ガスだ。水圧破砕法によって、米国に埋蔵されている大量の天然ガスを採取できるようになり、生産コストが大幅に低下した。

ニューメキシコ州のエネルギー会社 PNMリソーシズ のパット・ビンセントコローン会長は「これこそが石炭を脇に追いやっている」と言う。同社の発電に石炭が占める割合は、昨年の51%から来年は41%に縮小する見通しだ。

天然ガスの豊富さとコスト低下に加え、新たな発電施設が5年前に比べて効率が格段に高くなっていることも要因だと指摘されている。

天然ガスの発電所は数年前まで、需要に合わせて稼働と停止を繰り返し、稼働時間は約30%にとどまっていた。現在はそれが50%を超えている。多くは実質的に休みなしで稼働を続けており、かつて石炭と原子力が果たしていた役割を奪いつつある。

現在、再生可能エネルギーによる発電には政府からの補助金が支給されている。

石炭による発電を支援するために政権が介入することに賛同している電力会社幹部はほとんどいない。原子力発電所を寿命が来る前に閉鎖せずに済むようにすべきだというのが大方の意見だ。

原子力発電は炭素を排出しないが、低コストの天然ガスや再生可能エネルギーで実現した低い電力卸売価格との競争で苦戦している。大手公益会社エクセロンの政府・規制担当上級副社長、ジョー・ドミンゲス氏は、ベースロード電源が危うい状況に陥らないうちは電力価格が低いのは素晴らしいことだが、「政策担当者は介入してこの状況に対処する必要がある」と述べた。

ミネソタ・パワーは、発電の多くの部分に風力を利用するほか、太陽光、カナダのダムを利用した水力、さらに最新鋭の天然ガス火力発電所を組み合わせれば、石炭による発電が大幅に減っても、信頼性の高い電力供給が容易になると考えている。

以上、Wall Street Journalから要約・引用しました。

https://www.wsj.com/articles/coal-nuclear-on-the-losing-end-of-power-shift-1499247002

 

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