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企業のSNS運用、ミレニアル世代の専門職に

 

ブランドのアカウント管理を正式な仕事と認め始めた企業

レイチェル・カーテンさん(30)は、8年前、インターンでソーシャルメディアに関わる仕事を始めた。

ブランド企業がオンラインで炎上したときに言われる定番のジョークが、「これはインターンがツイートしたのか?」だとカーテンさんは話す。

カリフォルニア州サンタモニカ在住のカーテンさんは、2013年に食材配達のスタートアップ企業「プレーテッド」でソーシャルメディアの運用を始め、会社を説得してインターンから正社員に切り替えてもらった。ソーシャルメディアは当時まだ新しい分野だったため、指導をしてくれる上司もいなかった。そのため、メガネブランドの「ワービーパーカー」や美容製品のサブスクリプション(定額課金)サービスを手掛ける「バーチボックス」などの米新興企業のSNSアカウント運用者にコンタクトを取り、会って話すことで仕事の腕を磨いていった。

プレーテッドとグルメ誌ボナペティでソーシャルメディアの運用に7年携わった後、十分な仕事を獲得できると考え、コンサルタントとして独立した。昨年12月には、メンタルヘルスなどの話題を取り上げる、この業界の専門家向けのニュースレターも立ち上げた。

「今は私たちのような人材が十分いるため、私が過去にしたように、毎回一から始める必要はない」とカーテンさんは話す。今は多くの正社員職があり、自身のニュースレターに求人広告を掲載し始めたほどだという。カーテンさんが8年前にこのポジションをたった一人で作りだしたときとは大違いだ。

フェイスブックとツイッターがプラットフォームを一般公開してから約15年たち、ソーシャルメディアは確立された主流のキャリア分野となった。大学にはソーシャルメディアに特化した学部もある。この仕事に就く人たちは、給与水準やこの職種を真剣に受け止めていない人たちとの対人関係において、いまだに新人向けの仕事として扱われることもあると話す。しかし、そうした事態は変わりつつある。この分野に携わる人たちの立場は強くなっており、正社員の仕事も増えている。

ソーシャルメディアに特化した職種では依然として、マーケティングなどの類似した職種よりも低い給与が提示されることが多い。求人サイト「グラスドア」の広報担当者によると、マーケティング担当者の平均年間給与は、同サイトで応募しているマーケティングディレクターの場合、10万2496~10万9607ドル(約1120万~1200万円)。それに対し、ソーシャルメディアディレクターの平均年間給与は6万7892ドル(約750万円)、ソーシャルメディアアシスタントは4万7908ドル(約550万円)だ。

「ソーシャルメディアは誰もが使っているから簡単に違いない、という考えがいまだにある」。米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズでソーシャルメディアを担当するアラナ・ビスコンティさん(30)はこう話す。

しかし、この分野は近年、専門職として認められつつあるという。ビスコンティさんが2015年にニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)で学士号を取得した際は、「キャリアパスとは全くみなされていなかった」。だが、米ホテルチェーン大手ハイアットや独スポーツ用品大手プーマの仕事も経た今、ビスコンティさんはソーシャルメディアに生涯のキャリアをささげても構わないと考えている。「(ソーシャルメディアについて)好きな点は、消費者と最も直接的につながれることだ」とビスコンティさんは話す。

この分野の仕事の増加を受け、南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム学部は2018年、デジタルソーシャルメディアの修士課程を立ち上げた。こう話すのは、同プログラムを統括するダニエラ・バロフィオ氏だ。経営者はデータ分析などの技術的な能力とストーリーを伝える能力の双方を持つソーシャルメディアの専門家を求めており、同学部はそうした需要に応えることを狙いとしているという。

「この仕事はもう入社したばかりの人に任せる職種ではない」とバロフィオ氏は指摘する。ソーシャルメディアが一分野として成熟することには、社会的なメリットもあると同氏は考えている。アジア系への憎悪犯罪撲滅を訴える「ストップ・アジアン・ヘイト」運動などのオンライン上の組織化や抗議活動は、プラットフォームの活用方法を洗練化することにもつながっているという。「それも、この新しいソーシャルメディア人材の産物の一つだ」

マイク・ステルズナーさんは2013年から、業界専門家を対象とした年次カンファレンス「ソーシャルメディア・マーケティング・ワールド」を主催している。ステルズナーさんによると、2013~20年にかけて参加者は約1100人から4000人超と4倍近くに増えた。主な参加者も、ブランドのソーシャルメディアアカウントで顧客に受動的に対応するコミュニティー管理者から、積極的にコンテンツを作成するフルタイムのソーシャルメディアマーケティング担当者へと変化した。

今は組織のソーシャルメディアアカウントで失態を演じた場合のリスクが高まっている上、物議を醸すコンテンツについてソーシャルメディアを通じてほぼ誰もが不快感や怒りを表明できるようになっている。そのため、スタートアップ企業から米中央情報局(CIA)に至るまで、ほぼ全ての対外的な組織がアカウント運用の専門家を置いている。

金融サービスなど、従来オンラインでの発信とは無縁だった分野の企業でさえも、今は専任の社員を抱えている。ハナ・アティエさん(28)は、2020年に創業されたニューヨークのフィンテック企業「ヨッタ」でソーシャルメディアを運用している。その前は、ゴールドマン・サックスのデジタル銀行業務部門マーカスでソーシャルアカウントを担当していた。

今は数年の経験を積んでいるものの、仕事のほとんどはいまだに独学だとアティエさんは話す。グラフィックデザイン用ツール「フィグマ」の使い方を自分で習得したほか、動画共有アプリ「TikTok」の個人アカウントを余暇にも常にチェックし、トレンドを見逃さないようにしているという。

TikTokのような新しいプラットフォームは数年ごとに登場している。そのため、この分野ではベテランよりも若者に分がある可能性がある。

マーケティング戦略家でソーシャルメディアのビジネスへの活用方法に関する著書もあるデービッド・ミーアマン・スコットさん(60)は、業界のそうした側面はもう自身の理解の範囲を超えていると話す。

「当初は、企業はソーシャルメディア専用のコンテンツを作成さえすればよかった。それが、私が初期に得た見解だった」とスコットさんは話す。「だが今では、アルゴリズムの仕組みを理解することが重要になっている。TikTokの動画をどの時間に投稿すればいいのかといったことについては、もう詳しいレベルでは分からない」

最近この分野に参入した若者の中には、先人たちよりも立場が強くなっていると感じている人たちもいる。

ソーシャルメディア運用とマーケティングを手掛ける会社をニュージャージー州で経営するアムヤ・ザネレさん(22)は、大学時代にパートタイムでマーケティングの仕事をしていたときと比較して、ソーシャルメディアは大変な仕事だという認識を受け入れる顧客が増えているようだと話す。新規顧客向けの1回限りの仕事の料金は最低2500ドルだ。継続的なコンテンツ管理の場合は、少なくとも6カ月の契約が必要で、料金は月額最低700ドルだ。

「年配の顧客の一部は、たとえプロセスを完全には理解していないとしても、ブランドがソーシャルメディアでしくじれば炎上しかねないと分かっているため、投資する価値があることを理解している」とザネレさんは話す。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/social-media-millennial-job-11627049740?mod=searchresults_pos1&page=1

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