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次世代の上司、威圧せず協調性引き出す人

 

 オフィスがどれほど変わろうと、「ボス」のイメージは不変だった。並外れた営業実績を積み上げ、出世の階段を上ったり、企業を渡り歩いたりしてきた人。新規顧客の心をつかみ、契約を完了させるのに最もたけた人。チームの目標やあなたの成績評価の最終決定権を持つマネジャー。眉1つ動かさずに「今度の土曜、出勤してくれ」と言える人。

 こんな上司はそろそろ絶滅するのでは?

 金融危機では管理職がいち早くコスト削減対象となったため、現在の管理職が抱える直属の部下は、2000年代前半に比べて平均で2倍増となっている(調査会社ガートナー調べ)。新型コロナウイルスのパンデミックの収束後も、この傾向は続くとマネジメントの専門家は予想する。一方、かつてマネジャーの時間を奪っていた管理業務(例えば、経費報告書のチェックや承認)は自動化されつつある。

 ボスを取り巻く環境が変わるにつれ、新たなモデルが浮上している。新しい上司は独裁者ではなくコーチだ。メンターではあるが、必ずしも営業やプログラミングの経験が豊富なわけではない。従来型リーダーは目立つのを好んだかもしれないが、新しいマネジャーは協調的な雰囲気を作るのが得意だ。あなたより年齢が若く、業界経験が浅い可能性もある。

 「マネジャーは今後、技術的な専門家というより社会情緒的な専門家として、部下が組織の文化にうまく適応できるよう手助けする」。ガートナーの人事調査部門トップ、ブライアン・クロップ氏はこう予想する。コロナの大流行による組織の変化で、十年来の傾向が加速しており、この先も部下の数は増え続けるだろうと同氏はみる。

 クロップ氏によると、旧世代の上司は、会社に特別な貢献をした有能な人が多く、昇進後はチームを指導する役割を期待されていた。このモデルは、職場の変化のスピードが緩やかな間は有効に機能した。ガートナーの調査では、2024年までにマネジャーの仕事の70%近くを自動化や人工知能(AI)などの技術が引き継ぐとみられ、アイデア創出と人材開発にますます比重が移るだろう。マネジャーの仕事の中心は次第にコーチングや情緒面のサポートになるはずだ。

 「『言われた通りにすればいいんだ』という表現はほぼ姿を消す」。ハーバード大学ビジネススクールのジョゼフ・フラー教授(経営実務)はこう話す。フラー教授は同大のイニシアチブ「未来の仕事マネジメント」の共同責任者を務める。

 マネジャーの役割が権力者から育成者へとシフトすれば、自社による化石燃料の消費から下請け業者の扱い方まで、あらゆる場面で部下を納得させることの重要度が高まると同氏は話す。また、こうした管理職の行動は主に大手の株式公開企業で始まったが、徐々に中小企業に波及していると同氏は指摘する。

 そうなれば、異なるタイプの従業員がマネジメント向きと判断されることになる。フラー教授によると、社会的能力が高度に発達した人、例えば「よく知らない人と効果的に会話ができ、聞き上手で、瞬時に物事を処理する」といった能力が有利だという。

 特にバーチャル環境では、デジタルプラットフォームを通じて部下の信頼と関与を引き出す能力が不可欠だ。つまり、マネジャーの学び方も変わらなければならない。

 スイスのコンサルティング会社、インスパイア925のマネージングパートナーで、HWZ大学の副学部長を務めるサニー・グローネベルト(Sunnie Groeneveld)氏によると、管理職のトレーニングは伝統的に事業運営の仕方を教育することに重点が置かれていた。だが最近ニーズが高まっているのは、急激な変化をうまく乗り切り、場合によってはそれを推進することに幹部を慣れさせる訓練だという。

 「変化に直面したとき、どの程度それを心地よく感じるかは人それぞれだ」と同氏は話す。そして『程度の差はあれ、これを前向きな経験にするために、リーダーとして何ができるか』をマネジャーは自問自答すべきだという。「この目標を達成するために必要なのは、指揮官ではなくコーチのツールであることが多い」

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/your-next-boss-may-be-more-of-a-coach-than-a-dictator-11610467280?mod=searchresults_pos1&page=1

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