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Netflix CEO、在宅勤務は「マイナス」

 

率直さを重視する企業文化や在宅勤務の難しさについてのインタビュー

Wall Street Journalは米ネットフリックスの創業者、リード・ヘイスティングス CEOにネットフリックスの企業文化と在宅勤務についてインタビューを行った。

ネットフリックスはテレビの視聴方法と娯楽業界の経営手法の双方を一変させた。コロナウィルスの流行により、家で過ごす人の数が増え、ネットフリックスの視聴者数はさらに大きく伸びた。だが驚いたことに、ヘイスティングス CEOは在宅勤務はネットフリックスにとって大きなマイナスだと考えていた。

1997年にマーク・ランドルフ氏と共に郵送で映画のDVDをレンタルする会社としてネットフリックスを創業。早いうちから流通の未来はインターネットにあると判断し、ハリウッドの制作会社やテレビ局が喜んで販売する古い映画やテレビ番組から配信を開始。後に「ハウス・オブ・カード 野望の階段」や「ストレンジャー・シングス 未知の世界」などのオリジナル番組を制作し、世界で2億人近い有料会員を抱える巨大ストリーミング会社を築き上げた。

その過程で特異な――そして一部の人にとっては熾烈(しれつ)な――企業文化を構築。ネットフリックスの流儀では、概して社内の決裁を経る必要なく大きなリスクを取ることや、無遠慮なほどの率直さでコミュニケーションを取ることが推奨されている。リーダーらはしばしば「キーパーテスト」を行い、特定のスタッフが引き抜かれそうになった場合、何としてでも引き留めようとするかどうかを自問する。答えが「ノー」であれば、そのスタッフは解雇される。

企業文化について記した自身の新著「No Rules Rules: Netflix and the Culture of Reinvention」の中で、ヘイスティングス氏はネットフリックスで働くスタッフをスポーツチームに所属する選手になぞらえている。俸給カットは残念なことではあるが、恥ずかしいことではない。「多くの企業と異なり、われわれは『平凡な成績には寛大な退職金(を払って去ってもらうこと)』を実践している」。そこには同社のモットーについてこう書かれている。

以下はヘイスティングス氏とのインタビューの主なやり取り。

――多くの社員が在宅勤務をする今、維持するのが難しくなったネットフリックスの文化はあるか

アイデアを議論するのが今は難しくなった。

――在宅勤務にメリットはあるか

いや、プラス面はない。対面できないこと、特に国をまたいで直接集まれないことは、マイナスなことしかない。コロナによって人々がどれだけ犠牲を払っているかを非常に強く感じている。

――多くの企業がコロナ禍の後も多くの社員を在宅勤務に移行させるとみられているが、どう思うか

平日の5日間のうち4日はオフィスで過ごし、1日はバーチャルで自宅から仕事をする。多くの企業で最終的にそのようになると予想している。

――社員をいつオフィスに戻すかについて、具体的な日にちは考えているか

恐らくワクチンが承認されてから半年後になるだろう。過半数の人にワクチンを受けさせることができれば、恐らくオフィス再開だ。

――著書の中で「われわれのようなビジネスが5年後にどうなっているかを知るのは不可能だ」と述べているが、どのようなことが知りたいか

われわれは実験に挑み続けている。ビジネスモデルは5年後もあまり変わらないだろう。アニメで打開できるか。ファミリーアニメでディズニーに追いつけるか。

――ネットフリックスを予期せぬチャンスを生かせる企業にしたいと述べているが、例えばどのようなものが予想外だったか

ノンフィクション番組がその好例だ。われわれは超プレミアムなテレビとしてスタートし、ノンフィクションへの拡大は大成功となった。世界中のコンテンツをシェアすることも大いに成功した。それまで米国人は国外で制作されたコンテンツは見ないと思われていた。

――ネットフリックスでは徹底的な率直さが重視されている。人事管理の観点から、社員は互いにどのくらい率直になることが許されているのか

われわれは社員に建設的になることを求めている。ばかな酔っぱらいのように振る舞い、相手に暴言を吐くことを求めてはいない。前向きな意図を持って接し、フィードバックを得ることで成長できる環境を作ってもらいたいと考えている。

腕立て伏せをしたり、マラソンをしたりするのはつらいことだが、強くなれることを分かっているのと同じだ。重要なのはフィードバックの仕方だ。学んでもらうためには不快なことも言わなければならないが、相手を攻撃する、またはそのように感じられるほど不快なものであってはならない。

――「忙しくないCEOだけが本当に自分の仕事をしている」と書いているが、多くのCEOやその家族がその意見には同意できないだろう。もう少し詳しく説明してもらえないか

CEOとしては、戦術に夢中になりすぎないほうがいい。私の場合、役者選びや製品機能に関してなど、決定すべきことが多すぎる。忙しすぎると、たとえ意思決定が得意だとしても、会社の長期的な健全性や進化について考えなくなる。あらゆる場所で何が起こっているかは知っておきたいが、意思決定はしないほうがいい。

――最近、テッド・サランドス最高コンテンツ責任者を共同CEOに指名したが、企業の世界には共同CEO構造の失敗例があふれている

単独CEOの失敗例もたくさんある。確かに共同CEOは珍しい。2人が本当にうまく一緒に仕事をできなければ、きちんと機能しない。テッドと私は20年以上も一緒に働いている。彼は数年前から事実上の共同CEOであり、それを正式なものにしただけだ。

――ネットフリックスは業界屈指の給与の高さで知られている。それによって、あなたやハリウッドの他の人たちにとってコストがつり上がることは懸念ではないか

優れたスポーツチームを見た場合、最も優秀なプレーヤーに高い報酬を払えるチームであることが多い。われわれは絶対的に1番のプレーヤーをそろえたいと考えており、報酬はその一部だ。そこそこの人材を4人そろえるよりも、卓越した人材を3人そろえたい。

――価値や創造性は時間で測るべきではなく、労働時間に注意を払ったことはないと書いているが、ネットフリックスの多くのスタッフがそのライフスタイルを年中無休と表現している。ワークライフバランスの欠如や燃え尽き症候群になる可能性は懸念ではないか

またアスリートで例えてみよう。監督の視点で考えた場合、重要なのは選手が何時間ジムで過ごすかではなく、どのくらいうまくプレーするかだ。しかし、精鋭レベルのプレーヤーであれば、恐らくかなりの時間、ジムにいるだろう。ただそれは目標ではない。有効性が目標だ。

――著書のターゲット読者層は

非常にクリエーティブになろうとしている比較的小規模の組織や新しい組織だ。ワーナーメディアやディズニーなどの大企業にとっては、納得できない内容だろう。まだ目指すべき姿を見いだせていない比較的小規模の企業の助けになればいいと思う。

――ネットフリックスの文化は政治で役立つだろうか

政治は厄介だ。いろいろな意味で人々はうそをたくさんつく人を選ぶからだ。ビジネスにおいては、われわれはそれを極力避けようとしている。政治で成功する能力とビジネスのそれとは非常に異なる。

――コロナ禍で制作が中断されたが、再開のめどは

欧州やアジアの大半では再開している。(ロサンゼルスでも)既に一部を再開している。9~10月にかけて、適切な検査を行った上で、さらに多くを稼働できればと考えている。

――オリジナル番組が近いうちに尽きることはないということか

来年は今年よりも多くのオリジナルタイトルを見込んでいる。とても素晴らしいことだ。

――ネットフリックスがあなたの著書の映画化をするとしたら、誰に自分を演じてもらいたいか

ブラッド・ピットがいるじゃないか。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/netflixs-reed-hastings-deems-remote-work-a-pure-negative-11599487219?mod=searchresults&page=1&pos=3

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