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職場再開後の働き方

 

在宅勤務の拡大でオフィスの撤廃・縮小を検討する米企業が増加

新型コロナウイルスのパンデミックはいつか終息し、私たちは職場に復帰する。問題は「全てが終わった時、戻るべきオフィスがあるのか」ということだ。米国ではコロナを機にオフィスの在り方を根本的に見直す企業が増えている。

 大都市中心部のオフィスは減り、週に何日かの在宅勤務を認める「ハイブリッド」スケジュールが増加し、ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)措置のためのゆとりのスペースが増えそうだ。地価の比較的安い場所にサテライトオフィスができて従業員が分散するかもしれない。

 サンフランシスコに本社があるツイッターは今月、従業員の大半は在宅勤務を無期限に続けられることを通知した。カナダのITプロバイダー、オープンテキストは、世界に120あるオフィスの半分超を削減する見通しを示した。ニューヨークのメディア企業スキフトは、7月に期限が切れるマンハッタン本社のリースを延長しない。

 こうした変更は、職場への日々の通勤を中心に仕事と生活を考えている多くの労働者に大きな影響を与えるかもしれないが、その結果はまだ分からない。沿岸都市の労働者の一部は現在の給与のまま生活コストが低い都市に住めるかもしれない。だがそれは、そうした労働者が、コストのさらに低い外国の労働者に簡単に取って代わられ得ることも意味する。労働者は柔軟性を得るが、家事からの一時的開放や職場での突発的な意見交換を懐かしむかもしれない。大企業は不動産コストを節約するだろうが、無料のコーヒーや食べ物などオフィスでの従来の特典が以前のように必須とみなされなくなれば、人材獲得競争で中小企業に対する優位性が減るかもしれない。

 オフィスの新たな在り方を模索する動きの背景には経済の縮小がある。企業は大恐慌以降で最悪と予想される景気低迷に際して新たなコスト削減策を探っている。多くの幹部は、空前規模の在宅勤務の成功に言及。テクノロジー、メディア、金融、その他業界で数百万人の従業員が数カ月にわたり遠隔勤務を強いられているが、生産性はほとんど影響を受けていないようだとしている。

 オフィス見直しの増加で最大の負け組は商業用不動産市場と、それに多額の投資をしてきた機関投資家かもしれない。年金基金や保険会社をはじめとする機関投資家は、都市の大きなオフィスタワー取得に多額の資金をつぎ込んできた。継続的なテナントが頼みの綱だが、需要は減速しそうだ。

都市部のオフィスが近く姿を消すと言っているわけではない。リース契約は解約・破棄が難しいし、オフィスを丸ごとなくそうとする企業はほとんどない。都心部のオフィスビルの需要予測が誤ってされたことは以前にもあった。一部企業が郊外のオフィスパークに出て行った20世紀後半と、衝撃的だった9・11同時多発テロ後のことだ。いずれの時も、都心に集中したビルは意外に堅調だった。

 不動産業界では、従業員全員が一か所に集まる有効性にとって代わるものはないとの声が聞かれる。不動産投資会社イーストディル・セキュアードの幹部ウィル・シルバーマン氏は「この20~30年における米国のビジネスの最も重要な課題のひとつは、会社全体の文化の確立だった。適切な企業文化を持つことで会社を成功させられるという考えだ」と指摘。その上で、「1週間に数日しか一緒にいない人たちの間で文化をどうやって醸成できるのか分からない」と述べた。

 しかし、コロナウイルス感染が拡大するなか一部の企業は既に従来型オフィスからの撤退を計画している。オープンテキストのマーク・バレネチェアCEOによると、同社がオフィスを半分以上削減すると1万5000人の従業員のうちバックオフィスや顧客リレーション、テクノロジーサポートなど2000人が常時在宅勤務になる。

 従業員が物理的に離れても企業文化を維持するため、オープンテキストはオンラインのハッピーアワーやチェストーナメント、ゲームナイトを開催。ビデオ会議では自身の個性を表す背景を使うよう奨励している。同社はオフィスのリース契約について、更新しない物件とオーナーと交渉する物件を決めるプロセスにあるという。

 一方、ツイッターのジャック・ドーシーCEOは5月12日、従業員に対し、遠隔ではできない一部の業務を除き、パンデミック終息後も在宅勤務が可能になると述べた。ツイッターはオフィスの閉鎖や縮小は計画していない。

 パンデミックが始まって以来、同社は従業員の交流を促すためバーチャルなイベントを開催してきた。人事担当幹部のジェニファー・クリスティ氏は、バーチャルになって会合参加者が増えたと話している。

 過去10年、企業はできるだけ多くの従業員を詰め込んでオフィスのスペースを減らそうと努めてきたが、ソーシャルディスタンスの規則でそれがますます難しくなっている。現在では多くの企業が従業員同士の間隔を空けるため、より多くの従業員に在宅勤務を認め、オフィスフロアを再編すると話している。不動産分析のグリーン・ストリート・アドバイザーズによると、企業は通常、売上高の2、3%をオフィススペースに充てているが、これは今後減少すると見ている。

 セントルイスを拠点とするメーカー、ベルデンのオフィスは現在、幹部が個室を、他の従業員は仕切りと机を持つスタイルだ。ジョー・ストループCEOは「それについて再考しており、スペースの完全な無駄だと思うようになった」と説明。人が集まれる複数の会議室と、従業員が出勤する日に自分のパソコンを置くオープンデスクからなるオフィスの方がベルデンには向いているとの認識を示した。同社は従業員1万人で、電気通信業界や医療業界向けに光ファイバーや産業用ケーブルを生産している。

 同CEOは、従業員のバーチャルな交流が改善していると述べた。3月にはビデオ会議で話をしてもぎこちなかったが、今週は「ジョークが増え、ボディーランゲージが以前より多く見られるようになった」。

 ストループCEOによると、同社は拠点の状況やオフィスのレイアウトを見直し、従業員が週に数日在宅で働けるスケジュールを実現しようとしている。そうしながら会社の文化を維持する方法は「私たちが見つけなければならないことだ。私は乗り越えられない壁ではないと思っている」。 

 オフィスそのものをなくす企業もある。旅行業界をカバーするビジネスメディア企業スキフト(従業員約60人)は、7月下旬に期限を迎えるマンハッタン・ミッドタウン本社のリース契約を更新しない。ロンドンを拠点とする従業員の共同作業スペースの契約も更新しない。こうした動きで、公共料金やオフィスの菓子、交通費など年間60万ドル(約6400万円)近くを節約することになるとラファト・アリCEOは話している。将来的には週に1、2日、従業員が集まれるようなスペースを借りる可能性があるという。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/when-its-time-to-go-back-to-the-office-will-it-still-be-there-11589601618?mod=searchresults&page=1&pos=1

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