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在宅勤務「ちゃんと働いているか」 監視ソフトを導入する企業

 

米フロリダ州でSNSマーケティング会社98バック・ソーシャルを経営するヒュエッター氏はこれまで従業員を監視する必要を全く感じなかった。300平方メートルのオフィスにちらりと目をやり、彼らの様子を確認すれば十分だった。が、新型コロナウイルスのパンデミックがその考えを一変させた。

 3月に在宅勤務を開始して数週間後、ヒュエッター氏は始業時間をとっくに過ぎてからパソコンに向かうスタッフがいることに気づいたという。メッセージへの返信が遅れがちな者も出てきた。同氏はリモートワークにはあれこれ調整が必要なことを理解しているが、それでも不安になったと話す。

 そこで同氏は従業員にあるツールをインストールするように求めた。パソコンのスクリーンショットを10分おきに撮影し、特定の活動に要した時間を記録するものだ。

 「われわれが理解したのは何が起きているのか把握できないということだ。生産性が低下しつつあることをわれわれは懸念した」と同氏は言う。

 新型ウイルス感染拡大の影響で、何百万もの人々が唐突に自宅で働き始めた。そのため従業員がその時間をどう過ごしているかを知りたがる企業が増えている。その要請に応えるための監視ソフトは数多くある。

 監視ソフトはリモートワーカーの日々の生産性スコアや勤務時間をどのような作業に費やしたかという詳細な報告書をマネジャーに提供する機能を持つ他、会社の資料を不正にダウンロードしたり、セキュリティー規則に違反したりする可能性が高い従業員を見つける機能を有する場合もある。

 会社側はこのような監視ソフトを従業員には非通知で、従業員のノートパソコンに遠隔操作で加え、作業のモニタリングを行っている場合もある。

 また企業は、社内で影響力を持つのは誰か、どのチームが最も生産性の高い傾向があるかなど、さまざまな観点で判断できる監視・分析ツールを使うこともできる。こうした技術によって優秀な社員とそうでない社員を見極め、より的確な人材の配置ができるとされる一方で、こうしたツールは微妙な差異を捉えきれず、バランスの取れた判断を下すのに十分でない可能性があるとも警告されている。

 「いま起きていることは、すでに起き始めていた状況が単に加速しているだけだ」。デバイス管理・セキュリティー企業モバイルアイアンの製品管理担当シニアバイスプレジデント、ブライアン・フォスター氏はこう話す。

 職場管理ツール開発会社は、新型コロナウイルスで働き方が変わって以降注文が増加したと話す。従業員管理ソフトウエアを手がけるアクティブトラックのセルバッジ最高経営責任者(CEO)は、ここ数週間に1000社余りの企業が新たに同社のソフトの利用契約を結んだと話す。

 「少し常軌を逸している」と同氏は言う。利用する企業は法律事務所や保険会社、銀行などに広がっているが、こうした業種では「恐らくこれまでリモートワーカーを抱えたことがなく、心配で心配で仕方がないのだ」と同氏は話す。

監視ストレスで疲弊も

 テラマインドは雇用主が従業員のコンピューター画面をライブで見たり、仕事中の動画を保存したりする技術を提供している。同社では3月中旬以降、問い合わせ件数が3倍に急増したほか、約2000社の顧客のうち3分の1ほどが追跡対象者を増やす許可を求めてきたという。

 集合住宅などの不動産管理者向けに保守管理・請求業務サービスを提供するアネクイム(本社・ネブラスカ州オマハ)では、米国とメキシコの全域で従業員が在宅勤務を行っている。だが勤務中に子どもたちや他の家族が自宅にいるため、仕事に集中できなかったり、さまざまな課題を抱えたりしている従業員が多い。同社が最近導入したハブスタッフという管理ソフトは、従業員と働き方についての会話を始めるきっかけになるとアスペン氏は言う。管理ソフトは困難な状況にある従業員を見つけ出し、マネジャーが解決策を探るのに役立つからだ。ソフト上で生産的でない従業員に気づけば、どうすれば生産性を上げられるかを話し合うことができる。

 一方、こうしたツールは従業員のプライバシー懸念の限界を試すことにもなる。コーネル大学ILRスクール(産業・労使関係学部)のアジュンワ助教は、労働者への行き過ぎた監視は逆に生産性を阻害する場合があると警告する。「監視されるストレスで疲弊したり、監視に気を取られるあまり仕事がおろそかになったりする問題が生じている」とアジュンワ助教は話す。

 失業保険を申請する米国人が2200万人を超える中、多くの労働者は仕事の成績が今まで以上に重視されているという強い感覚を抱く。「率直に言って、職を失うわけにいかないという事実だけでも従業員にはすでに生産性への十分な動機がある」と同氏は指摘する。

 冒頭のSNSマーケティング会社のヒュエッター氏は先月、追跡ソフトのハブスタッフを導入する理由を従業員にメールで説明し、バーチャル会議で話し合いを行った。数人のスタッフは反対し、1人は「スパイウエア」だと批判したと同氏は振り返る。

 「導入時にはいくらか緊張があった」と同氏は言う。「彼らが(あきれたように)白目をむくのは見えなかったが、その気配を感じた」。一部の従業員は勤務時間以外に作成したファイルやウェブ検索履歴をヒュエッター氏は見られるのかと質問した。同氏はできないと答えた。従業員が休憩中や業務終了のタイマーを押すと、ソフトは追跡を停止するという。

 追跡ソフトを導入して数週間で、従業員の生産性は著しく向上したとヒュエッター氏は述べる。今や働き過ぎの従業員に気づいたり、特に生産性が高く、昇給に値するような従業員を見つけたりすることが可能になったほか、今後指導が必要な従業員にも注意を向けることができると話す。

 同氏は「(このツールが)気に入っている。もう戻るつもりない」と語った。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/youre-working-from-home-but-your-company-is-still-watching-you-11587202201?mod=searchresults&page=1&pos=1

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