コトラプレス (kotorapress)|株式会社コトラ

ビジネスパーソンのインテリジェンス情報サイト

セールは流行遅れ? 衣料業界に新たな動き

 

店舗閉鎖で余った在庫を先のシーズンに持ち越し、大幅値引きを回避

アパレル企業では、セールから手を引く動きが見られる。

 多くの衣料小売企業が、在庫のかなりの部分を先のシーズン、もしくは来年まで持ち越し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後で値引きが必須の過酷なシーズンに販売するのを回避しようとしている。この選択はリスクをはらんでいるものの、より良い案のように思われる。

 パンデミックはある意味、利益率とブランド価値を守る措置を取るのにうってつけの特異な状況を生み出した。広範囲で店舗が休業していたことにより、今シーズン向けの在庫の多くは幸い顧客の目に触れていない。そしてこれは、2008年の景気後退時を一部教訓にした防御措置でもある。

 BMOリサーチのアナリスト、シメオン・シーゲル氏は「各企業が特売同然に商品を販売し始めたことがきっかけで、その後5年間が値引き競争の時代になったことが人々の記憶にある」と指摘。「価格競争が継続した結果、ブランド価値の低下などの後遺症がその後何年間も続いた」と述べた。

 意外に思われるのは、一部商品の発売を1シーズンだけではなく、1年先延ばしにすることを検討している企業もあることだ。ギャップやカルバン・クラインの親会社PVH、子供服ブランドのオシュコシュ・ビゴッシュなどを持つカーターズなどが、1年先に在庫を持ち越す方針を表明。PVHは在庫の約16%、カーターズは19%を持ち越すと具体的に示している。ラルフローレンは在庫の一部を今後のシーズンに持ち越し、棚卸資産評価引当金を、在庫の22%相当の1億6000万ドル(約171億円)増やす方針を明らかにした。

 ヨガウェアを手掛けるカナダのルルレモン・アスレティカは持ち越し戦略を取ることは明言しなかったが、2-4月期の在庫が前年同期比41%増の水準にあるという。だが、減損処理にも棚卸資産評価引当金にも言及せず、現在余っている在庫を今後定価で販売できることに自信を示した。

 この持ち越し策は、流行に左右されないスタイルが特徴のブランドに最適だ。ザラを運営するスペインのインディテックスやスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)など、迅速に在庫水準の引き下げに動いたファストファッション企業の直近の決算説明会では、このような戦略については触れられなかった。一方、仏高級ブランドグループのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンや英バーバリー・グループ、グッチの親会社の仏ケリングなど、他の衣料小売企業と比較すると元々の在庫回転率が低い高級ブランドは、単にシーズンを引き延ばし、できる限り多くの商品を販売するとしている。

 在庫持ち越しにはリスクが伴う。ファッショントレンドは移ろいが早く、最も定番の商品でさえ、1シーズン過ぎただけで古くさく感じられることもある。だがそれでも、この戦略が可能な衣料小売企業にとっては、いくらかでもましな選択肢だ。いずれにしても、大規模なセールと値引きは常にリスクを伴う。全商品を店頭に並べて、ほぼ確実に利益率が犠牲になる路線を選ぶか、ビジネス環境が通常の状態に戻る公算が大きい今後にそのリスクを先送りするかだけの違いだ。

 衣料小売業界でこの戦略を取らない企業にとっては、これは注目に値する実験になるだろう。顧客は、目の前にある定価の新商品が、実は前年の商品だということに気づくだろうか。もし気がつかないようなら、アパレル企業は今後、マージン管理のための新たな秘策を手に入れることになる。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/sales-are-going-out-of-style-at-these-retailers-11592391603?mod=searchresults&page=1&pos=4

おすすめ記事

1
独立社外取締役(コーポレートガバナンス・コード)について

コーポレートガバナンス・コード 2014年6月にとりまとめられた「『日本再興戦略 ...

2
独立社外取締役(コーポレートガバナンス・コード)の独立性基準について

独立社外取締役(コーポレートガバナンス・コード)の独立性基準 2014年6月にと ...

3
これまでの社外取締役/社外監査役の属性・兼任等の状況と、今後の 独立社外取締役(東証ベース)の選任についての調査・考察

株式会社コトラによる社外役員実態報告について 人材ソリューションカンパニーの株式 ...

4
職場の同僚と理解し合えないのは性格の不一致~人間関係に現れる価値観のちがい 組織理解vs他者理解~

 職場の人間関係におけるアプローチについて、価値観の多様性から考えてみます。 相 ...

5
バブル体験の有無が価値観の差~70年代生まれと80年代生まれの価値観にみる世代ギャップ~

上司が、部下に的確に仕事をしてもらうために知っておくべきこと 「今の若いものは、 ...

 - キャリア/転職