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在宅勤務への流れが止まらない 完全リモートワーカーは12年の15%から16年は20%に上昇

 

米パソコン大手デルが最近11万人の従業員を対象に勤務実態を調査したところ、驚くべき結果が出た。好きな場所で働いてよいと正式に許可された従業員は17%にとどまるが、既に58%が週に1日以上、リモートワーク(在宅勤務)を行っていた。これは喜ばしいことだと最高人事責任者のスティーブ・プライス氏は話す。同社は2013年、従業員の半数が20年までに少なくとも週の何日かを在宅で働くことを目指すと表明していた。

これとは対照的に、IBMは5月、従業員数千人に対し、在宅をやめて地域別に定めたオフィスに職場を移すか、退職するかの選択を迫った。 IBM は過去に、オフィス以外で働く従業員の数が全体の40%以上に達したと誇らしげに公表していた。既に始めた在宅勤務制度を廃止する方向の企業はほかにヤフー、 バンク・オブ・アメリカ (バンカメ)、保険会社エトナなどがある。

一方で、リモートワークに向かう流れはもう止まらないことをデータが示している。仕事の場所を選ばないツールが日々進化していることもこれを後押しする。ギャラップの調査によると、2016年に仕事の全部または一部を自宅で行った米国人の割合は43%で、12年の39%から上昇。完全在宅勤務の比率は16年に20%と、12年の15%から上昇した。アマゾン・ドットコムや アメリカン・エキスプレス 、ユナイテッドヘルス・グループ、 セールスフォース ・ドットコムは従業員に少なくとも部分的な在宅勤務を認めている。

在宅中心企業の例

在宅勤務導入のさまざまな理由の一つとして挙げられるのがオフィスの賃料節約だ。また、従業員の満足度を高め、離職防止や新規採用に役立つとする企業もある。

しかし現実に立ちはだかる問題は、知識労働者を雇う企業の側がリモートワークにどのような仕事がぴったり合うかをまだ模索中であることだ。

大企業でこの移行を実現するのは容易ではないと、デルのプライス氏は言う。必要不可欠なのはリモートワークの環境を整えることだが、その作業には費用も時間もかかる。

これを理解するには、ほぼ完全なリモートワークを続ける企業の例が参考になるだろう。ブログプラットフォーム「ワードプレス」を提供する米オートマティックは558人の従業員が50カ国以上に分散している。

同社の従業員は14年末の302人から増えたにもかかわらず、サンフランシスコにある約1300平方メートルの光あふれるオフィスとは縁を切りつつある。通常の日でも5人程度しか出社することはなく、広大なスペースはがらんとしている。誰も遊んでいない卓球台やサッカーゲームの数のほうが多い。

複数の時間帯にまたがって働く同社のチームは、チャットには「Slack(スラック)」を、毎週のテレビ会議には「Zoom(ズーム)」を、従業員の作業管理や主要な決定に関するスレッド別の対話には独自の社内システムを使用している。

同社が14年に買収した長文メディアサイト「Longreads(ロングリーズ)」のマーク・アームストロング氏は「テレビ会議のときは他のメンバーが同じ部屋に一緒にいるような感覚」になり、誰かが取り残されることはないと話す。

オートマティックで技術サポートを担当するジュリア・アモソバ氏は、他にも利点があると話す。オンラインで通信すると誰もが社内の対話をすべて検索できるため、根本的な透明性が確保されるというのだ。「過去に働いた職場では会議の大半が密室で行われていた」と同氏は言う。「ここで味わう職場の一体感はなかった」

オフィス環境に代わるツール

ただ、オートマティックのような純粋なソフトウエア企業でなければ、100%の在宅勤務は恐らく難しいだろう。デルのプライス氏は、在宅勤務社員をこれ以上増やすつもりはないと話す。「エンジニアや幹部、研究開発(R&D)部門、販売、カスタマーサポートなどはリモートワークにあまり向かない職種だ」。同氏によると、人事や法務、マーケティング、分析、データサイエンスなどの支援業務などが適しているという。

オフィスで働く従業員には自然と協業体制が生まれると、ミシガン大学のジェーソン・オーウェンスミス教授(社会学)は指摘する。同教授の調査結果によると、建物内での日常的な歩行範囲の重なりが30メートル増すごとに、今まで協力したことのない2人の研究者が新たな共同プロジェクトを始める可能性が17%高まり、彼らのプロジェクトが資金を獲得する可能性が20%高まることがわかった。

リモートワーカーが日常的に使うコミュニケーションツールはこの共有スペースに相当する。その最たる例がグループチャットの「Slack(スラック)」だ。アニメーションGIFなどの楽しい機能が同僚との交流に役立つほか、チャットボットや他の社内ソフトとの連携により、ビジネスの多くの側面でコミュニケーションや業務管理のハブの役目を果たす。

ツール以上に重要なのはそこに内在するプロセスだと話すのは、プロジェクト管理・協業ツールを提供するベースキャンプのジェーソン・フリード共同創業者兼最高経営責任者(CEO)だ。同氏は「強いチームはオフィスを捨てる:37シグナルズが考える『働き方革命』」の著者でもある。在宅かどうかは別として、チーム全員がこのプロセスに積極的に参加する必要があり、そうでなければ重要な情報や決定のチャンスを逃すことになるという。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

https://www.wsj.com/articles/why-remote-work-cant-be-stopped-1496577602

Even as work-from-home policies are reconsidered at big companies like IBM and Aetna, more Americans overall are working remotely than ever before.

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