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食品スーパー再編か、アマゾンの一手

 

ホールフーズの買収が業界に与える影響は圧倒的

金額的には中規模の買収にすぎない。トムソン・ロイターによると、アマゾン・ドット・コムによる137億ドルでの自然食品スーパーマーケット大手ホールフーズ・マーケットの買収が実現すると、米国の小売業としては4番目の規模の買収になるという。

しかし、買収が発表された6月16日にウォールストリートが考えていたのは買収金額のことではない。アマゾンによるホールフーズの驚くべき買収で、投資家は小売業の将来についての評価を急に迫られることになり、アマゾンの圧倒的な力に突然さらされることになった企業の株価は大幅に下落した。

 食品スーパー大手クローガー(KR)は9.2%下落し、会員制量販店大手のコストコ・ホールセール(COST)は7.2%下落、小売りチェーン大手ターゲット(TGT)は5.1%下落した。ドラッグストアチェーン大手 ウォルグリーン ズ・ブーツ・アライアンス(WBA)は5%下落し、ウォルマート・ストアーズ(WMT)は4.7%下げた。これらは投資家がアマゾンと直接競合することになると懸念した企業だ。

影響はさらに広範囲に及んだ。スパイス・調味料製造販売のマコーミック(MKC)は3.5%下落、加工食品メーカーの コナグラ・ブランズ (CAG)は3.2%、そして食品大手のゼネラル・ミルズ(GIS)も2.9%下落した。これらは、食品スーパーの中央に陳列される、利益率の高い商品を扱う企業だ。

食品も今やアマゾンのテリトリーだ。特にアマゾンは既に、シャツ、電池、ウエットティッシュなどのプライベート・ブランドの商品の製造に一部成功している。これにホールフーズの365ブランドが加わるとなれば、食料雑貨小売業や食品業界全体が懸念する理由は理解できる。

アマゾンの提示した1株当たり42ドルという買収価格は、ホールフーズの6月15日の株価に対して27%のプレミアムとなる。

ホールフーズの売上高は160億ドルと、米国の食料雑貨市場に占める割合は2%でクローガーやウォルマートの食料雑貨の売り上げと比べるとわずかだ。しかし、アマゾンには、オンライン食料品販売のアマゾンフレッシュでホールフーズの基盤を利用し、自社の技術を生かす能力がある。また、保守的に見積もって6000万人超とされるアマゾンプライムの顧客基盤はホールフーズの顧客とおそらく重複する。

アマゾンはホールフーズの業績を改善し、ホールフーズの顧客と直接的な関係を構築するとともに、他の分野の成長のために流通プラットホームを利用する明確な方法を模索することになると考えられる。また、アマゾンは主に富裕層の居住する地域に立地するホールフーズの400以上の店舗の形態を変える機会を得ることになる。

ホールフーズは先月、売上高の増加、費用削減、減少している既存店売上高の反転、株主還元の拡大を目標とする3カ年戦略を発表しているため、タイミングは注目に値する。計画はアクティビスト投資家の圧力を受けて発表したもので、アクティビスト投資家はホールフーズの取り組みに満足していないようだ。ホールフーズのジョン・マッケイ最高経営責任者(CEO)率いる経営陣は、アマゾンによる買収を受け入れ、実質的に非公開会社になり、アクティビストの圧力から逃れる方が良いと決断した可能性がある。マッケイ氏はホールフーズのCEOにとどまる見込みだ。

以上、Barron'sより要約・引用しました。

http://www.barrons.com/articles/amazon-and-whole-foods-is-this-a-grocery-apocalypse-1497673586

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