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ハイテク分野で振り返る、未来を創る10の注目点

 

2030年までに広く普及しているであろうトレンドの多くは今すでに動き出している

われわれが今、2030年の世界にいると想定して、世の中がどう変わっているか想像してみよう。空飛ぶ車、超音速機による旅行、人間と一緒に街を歩き回るロボット、1日の多くの時間をメタバースで過ごす生活などが思い浮かんだだろうか。

 実際そんな風になるかもしれない。

 そして、2030年に広く普及しているであろうハイテクトレンドの多くは、現在既に動き出している可能性が大きいように思える。

 過去2年間のパンデミックによる不自由な生活のせいで、こうした流れが特に進んだ。仕事や学習をはじめとするすべての活動を、長期にわたって自宅から行うように世界が変化したため、未来の技術を採用するスケジュールが前倒しになった。これまで二の足を踏んでいたあらゆる分野の企業が、一夜にして変化した顧客や従業員のニーズと期待に対応するため、ついにデジタルの世界に踏み込まざるを得なくなった。

 これらを念頭に置いた上で、この1年間にハイテク関連分野で起きた10の出来事を見てみよう。これらの出来事は、今後何年にもわたる企業活動と市場の未来を形作るものだ。

1.新世代の消費者

 新しいタイプの消費者が出現してきた。彼らは「ジェネレーション・ノベル(新型世代)」と呼ばれる。新型コロナウイルスによる混乱の中から生まれてきたからだ。何カ月にも及んだロックダウン(都市封鎖)に伴い、消費者は基本的に生活のあらゆる側面でデジタル優先の対応を学ばざるを得なくなった。仕事、学習、買い物、くつろぎの時間、友人や愛する人とのつながりなども、その中に含まれる。こうした状況下で、買い物の仕方や意思決定、価値観、利用し続けるブランドなどに関する顧客の好みが変わった。顧客に提供する体験の形態を見直し、新世代の変わりゆく需要に合わせて方向性を変えるため、今やあらゆる規模、あらゆる産業分野の企業が、早急な対応を必要としている。

2.厳しいチェックを受ける巨大ハイテク企業

 フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)の元従業員、フランシス・ホーゲン氏の内部告発を受けて、多くの政府・企業幹部や利用者はようやく「もうたくさんだ」という共通認識を得たようだ。彼女の告発は、フェイスブックのサービスが、利用者に害が及ぶことを防げず、恐らく有害な環境の提供を可能にしているというものだった。ハイテク企業の恐るべきアルゴリズムの下では、サービス利用者は商品であり実験動物であることが、これによって明白になった。後に今年を振り返った時、巨大ハイテク企業が自らの行動を管理する時代が終わったことに気付くかもしれない。デジタル世界と現実社会が長期的に共存していくためには、利用者の取り込みではなく、利用者の安全とネットワークの説明責任が極めて重要だ。オンラインの世界の相互作用をより良いものに変えていく上で、ウェブ3.0(次世代ネット基盤)と、より開放的かつ協調的で責任感のある枠組みが重要になる。

3.拡張現実(AR)の発展

 新型コロナのパンデミック下で、実店舗が一時閉鎖されたり、一般入店者を制限したりしていた時期に、電子商取引(EC)は急成長を遂げた。伝統的なECは2次元、静止画像の世界だったため、オンラインショッピングの顧客が買い物の実感を得るのを助ける機能が限られていた。そこで拡張現実が、衣料品から靴、自動車、フォークリフトに至るまであらゆる製品をバーチャル化するという特異な需要に対応することになった。拡張現実の助けによって顧客は、求める商品が実際に目の前にあるかのように感じられるようになった。顧客の61%が、パンデミック後にはそれ以前よりも多くの時間をオンラインで過ごすようになると予想している状況下では、たとえ実店舗や倉庫が再開されたとしても、今後はECの売り上げ増加に拡張現実が重要な役割を果たすようになるだろう。

4.仮想現実(VR)が小売りの世界を変える

 フェイスブックがメタバースの構築に注力するため、社名を変えると大々的に発表したり、メタバースが数億ドル規模のビジネスになる可能性があるとエピック・ゲームズのティム・スウィーニー最高経営責任者(CEO)が予想したりしたことで、主流となる仮想世界を作る戦いが正式に始まった。しかし、それと同じくらい大きな変化が、誕生したばかりのVRの小売りアプリケーションで起こっている。小売業者は拡張現実と同様に、静的なウェブページを調べるよりも、バーチャルストアを通じて商品を眺めるのを好む買い物客の間で、ECが伸びていると報告している。小売りの未来は自宅で没入感を得るものであり、2021年はひとつの段階を超えた年だった。

5.チャットボットに人間らしさが加わる

 パンデミックをきっかけとしたオンライン販売の急増に伴い、ECや顧客サービスの分野では、チャットボットの採用が急増した。ただし、大半のチャットボットが提供する顧客体験は期待以下となっている。ところが、人工知能(AI)で強化されたデジタル「人間」がそれを変え始めた。例えば、食品大手のネスレは、ソウル・マシーンズとの協力でバーチャルなクッキー作りの先生「ルース」を開発した。パンデミックの間、クッキーを焼く際のアドバイスを求める顧客の声が増え、これらの要望に個々に対応するためだ。こうした賢いバーチャル担当者はパンデミック後に中心的な存在となり、企業は個に応じた親しみの持てる楽しい体験をいつでも無休で提供できる新たな顔を顧客サービスに追加できるようになるだろう。

6.サプライチェーンが人間らしさを失う

 米国企業は2021年、サプライチェーン(供給網)の難題への対応に苦労した。問題の一つは、サプライチェーンの物流に関する重要な判断の大半が、依然として人間によって下されていることだった。人間は、内部および外部のパートナーのシステムで創出される膨大なデータを管理する能力を持っていない。そうした中、サプライチェーンの最適化やコストと無駄の削減、将来的な混乱の回避を目的にAIを採用し、判断を推奨あるいは判断自体を下してもらうことさえしている企業が出始めている。

7AIが倫理的にアップグレードする

 「人間は誰しも偏見を持っている」と言われている。AIシステムを設計するのは人間であるため、今の段階では偏見はコードに組み込まれていると想定される。意図的ではないにしても、AIはジェンダーや倫理に関する偏見、プライバシーや尊厳および主体性への脅威、大規模な監視の危険などを持ち込む。2021年11月には、193の国々がAIの倫理に関する初の世界的な規範を採択した。狙いは、人権を促進し、AI技術の倫理的かつ包摂的な開発を確実にするための法的インフラと枠組みを構築することだ。倫理をわきまえたAIの開発者はこの枠組みをプラットフォームとして利用してビジネス的な価値や、より革新的な製品を生み出し、誰にとってもより良い世界を作ろうとする社会に前向きなインパクトを与える技術を安全に開発できる。

8.ITの進化

 研究者のジョー・ペパード氏(マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院のプリンシパル・リサーチ・サイエンティストで現在は休職中)は現在の新型経済の時代においてレガシービジネス(過去の負の遺産を引き継いだ経済)の変革を支援するため、IT部門の大幅な見直しを提唱している。同氏は従来のIT部門を廃止し、その代わりにすべての部門を分散化されたITによって統合するビジネスを提案している。同氏によれば、こうした改革はデジタルファースト、ポストパンデミックの世界において命運を左右するものだ。ビジネスの成功はもはや、ITシステムの構築・管理だけにとどまらない。企業は今や、顧客を中核に据えたハイテク会社になることが求められている。

9.多様化するQRコードの役割

 QRコードのダウンロード回数は過去1年半の間にレストランでの利用を中心に急増した。パンデミックの初期段階でのQRコードの利用は、レストランでのメニューやその他の関連情報を客に示すなど、サービスを非接触型で提供することを意図したものだったが、その用途はありきたりで、基本的に顧客をベーシックな静止型のウェブページに案内するものだった。しかし、少しの想像力と意欲によって、QRコードは革新的なモバイルファーストのハイブリッド体験を顧客に提供する新しい機会を開くことが可能だ。例えば、客がメニューのQRコードをスキャンすると、選んだ料理の画像や、シェフが料理の内容や作り方を説明するビデオにリンクできるようになるかもしれない。あるいは注文した料理を友人と共有するために洒落た写真を撮影できるよう、アニメ付きの(店の)ブランド・フレームを提供してくれるかもしれない。

10.変革をもたらすウェブ3.0

 暗号資産(仮想通貨)、非代替性トークン(NFT)、ブロックチェーン、自立分散型組織、メタバース。いずれも流行の言葉だ。しかし、これらの用語はまた、ウェブを次の世代、つまりウェブ3.0に導く重要なトレンドを反映している。ウェブ2.0は、モバイル、ソーシャル、クラウド・コンピューティングという「黄金の三角形」をつなげたソーシャル・ウェブ、あるいはプラットフォームとしてのウェブの時代と広く認識されていた。ウェブ3.0のビジネスモデルは、分散型、開放性、管理者の存在しないネットワークであり、暗号化され、説明可能な(記録を残せる)分散型台帳に基づいて運用される。アート、銀行、保険、ヘルスケア、行政サービスなどすべてのものは、従来型の会社組織によってではなく共有グループによって所有される付加価値のあるモノおよびサービスとして見直される。一例を挙げると、従業員の保有する会社だ。そこに所属する人々は顧客でもあり、同時に組織のステークホルダー(利害関係者)にもなっている。そこでは規則、政策、価格の策定について意見を言えるだけでなく、分け前を得ることさえも可能になる。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/10-tech-events-of-2021-that-will-shape-future-11638822715?mod=Searchresults_pos1&page=1

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