コトラプレス (kotorapress)|株式会社コトラ

ビジネスパーソンのインテリジェンス情報サイト

組織の能力を高めるために必要な上司の資質

 

自分で答えを出すのではなく、質問力を磨け

いつも同じ行動を繰り返し、それでいて別の結果を期待するのはおかしい。同様に、質問がいつも同じなのに、別の答えが返ってくると思うのは見当違いだ。もし劇的によい答えを求めるなら、そのカギはよりよい質問をすることだと、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院上級講師で、同大リーダーシップ・センターのエグゼクティブ・ディレクターのハル・グレガーセン氏は言う。

同氏がキャリアをかけて研究し、指導し、助言する価値があると気づいたのがこのシンプルな考え方だ。

それでは、「よい質問」とはどういう質問なのか。よい質問をするために、誰でも実践できる明確で具体的ないくつかのステップを以下に紹介する。

1.どう質問すれば創造的思考を引き出せるかを理解する

 質問はいくらでもできるが、創造的思考への壁を打ち破り、新しい生産的な方向にエネルギーを注ぎ込めるのは、ベストな質問だけだ。それには5つの特徴がある。

1.問題を再構成する

2. 想像力をかき立てる

3.他人の思考を呼び込む

4.異なる答えの余地を生み出す

5.攻撃的でないこと――他の当事者を困惑させたり、屈辱を与えたり、相手に力を誇示したりしてはいけない。

 ある経営者は、周囲の率直な意見を聞くためには自分の立場が邪魔だと気づいた。そこで部下に「なぜライバルのX社に出し抜かれたんだ?」と問いただすのではなく、「今どんなことで困っているのか? 何か力になれることはあるか?」などと声をかける。顧客や取引パートナーにはこう尋ねる。「もしあなたが私の立場だったら、当社が今やっているのとは別のやり方をしますか?」

 こうした聞き方は空気をがらりと変える。相手は防御態勢をとることから始める必要がなく、上司が聞きたい答えを言うこともない。質問の答えには何の制約もなく、想像力を自由に働かせることができる。

2.質問する習慣をつける

 多くの上司は質問するのに慣れていない。むしろ答えを出すのに慣れている。質問力を身につける初期段階として他人の質問をまねるとよいだろう。楽器の音階練習と同じだ。音階が弾けるようになると、次は即興演奏へと進める。

 経営思想家ピーター・ドラッカーは、次のように質問すれば、戦略的思考が活性化されるとした。「最近、『誰でも知っていること』以外にどんな変化が起きているか?」

 もう一つ例を挙げよう。消費者向けパッケージ商品を扱う企業の経営者は常にこんな質問をする。「購入する時点で消費者を喜ばせるためにもっと何ができるか? また、消費する時点で彼らを喜ばせるためにもっと何ができるか?」

 経営者が消費者を満足させたいと繰り返すだけでも十分かもしれない。だがこの質問により、大小を問わず、日常的にさまざまな問題で従業員の探究心が湧き、ひいてはその会社の競争優位を高め続けることになる。

3.常に新しい質問を考えることで習慣を強化する

 これで終わりではない。あなたの目標は新しくてもっとよい質問を考え出すことだ。完璧に音階が弾けるようになった時点で質問力を打ち止めにしてはいけない。

 まず毎日、何か周囲で起きた興味深く、恐らくは変化の兆しとなる事柄に注目する。次にそれについてコメント(あるいはツイート)したい気持ちを抑え、少し時間をとって頭に浮かんだ質問を明確な言葉にする。


 その中で最も聞かずにいられない質問を誰かと共有する。1分程度の作業だ。この繰り返しによって質問に必要な「筋肉」がある程度鍛えられる。だがそれ以上の効果もある。こうした一見ささいな質問の中に、次のブレークスルーを生む重要なヒントがあるかもしれないからだ。

4.少し立ち止まることを心がける

 誰かが問題を持ちかけた時、即座に答えてはいけない。これは思ったより難しいことだ。あなたは恐らく以前から、自分が上司になったのは決断力があり、良い判断ができるからだと考えている。言い換えると、自分ならベストな答えを出せると思いがちだ。

 その逆に、質問を返すことを習慣づけよう。理想を言うと問題を再構成するような質問だが、少なくともそれに関して相手の思考をもっと促すような質問だ。「じゃあ君は、どうすべきだと思う?」といった無責任な返答ではない。どのように結論を出すべきかを相手によく考えさせるためのものだ。「われわれが調整を続けているのは何のため?」、「どんな方向性になろうとも、われわれが達成すべき最も重要な事柄は?」、あるいは「決断を難しくしている原因は? 過去にも同じように感じた問題はあった?」というように。

 成果は2つの形で現れる。答えを急がず、ちょっと立ち止まることの意義を同僚に教えられること。そして十中八九、軽率に口走ったものよりも良い答えに行き着くことだ。

5.質問のブレーンストーミングを行う

 非常にシンプルですぐに練習できるこのやり方が、実は極めて効果的である。あなたのチームが袋小路に入り込んだ時や、まだ何か気づかない洞察があると感じた時は、そこで立ち止まり、4分間かけて浮かんだ質問だけを列挙してみるとよい。ブレーンストーミング同様、数の多さを目指し、途中で取捨選択はしない。少なくとも15~20個を目標にしよう。

 すると80%の確率でその問題に取り組む新たなアングルが見つかることをグレガーゼン氏は発見した。また必ずと言っていいほど人々は活力を取り戻し、新たな意欲につながるのだ。

6.質問者を評価する

 最後に、同じ職場の誰かがあなたのやり方に疑問を呈し、問題解決への道筋を外れかねないと指摘した時、あなたがどう反応したかを記録すべきだ。

 ある企業幹部からこんな話を聞いた。この会社のトップは経営チームの会議で、突拍子もないアイデアでも喜んで耳を傾けたという。誰もが首を振り、次の議題に進みたがる中、「ちょっと待て」と発言し、奇抜な発想の中に使えそうな部分を見つけ出そうとした。

 上司は自らの第一の仕事を再認識する必要がある。それは現時点でベストな答えを出すことでも、部下のチームに答えを見つけさせることですらない。上司の仕事は、常にイノベーションを生み出せるように組織の能力を高めることだ。

 自分の属する企業の未来と自身のキャリアの行方は、常に良い質問をするという決意にかかっている。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。https://www.wsj.com/articles/to-be-a-better-leader-ask-better-questions-11557426294?mod=searchresults&page=1&pos=5

おすすめ記事

1
独立社外取締役(コーポレートガバナンス・コード)について

コーポレートガバナンス・コード 2014年6月にとりまとめられた「『日本再興戦略 ...

2
独立社外取締役(コーポレートガバナンス・コード)の独立性基準について

独立社外取締役(コーポレートガバナンス・コード)の独立性基準 2014年6月にと ...

3
これまでの社外取締役/社外監査役の属性・兼任等の状況と、今後の 独立社外取締役(東証ベース)の選任についての調査・考察

株式会社コトラによる社外役員実態報告について 人材ソリューションカンパニーの株式 ...

4
職場の同僚と理解し合えないのは性格の不一致~人間関係に現れる価値観のちがい 組織理解vs他者理解~

 職場の人間関係におけるアプローチについて、価値観の多様性から考えてみます。 相 ...

5
バブル体験の有無が価値観の差~70年代生まれと80年代生まれの価値観にみる世代ギャップ~

上司が、部下に的確に仕事をしてもらうために知っておくべきこと 「今の若いものは、 ...

 - キャリア/転職