Uberを駆逐した滴滴、創業者の性格も勝因に
日本には進出していない配車サービスのUberだが、隣国中国では同市場を巡り、Uberと地元中国の滴滴出行が壮絶な市場争奪戦を行い、滴滴が勝利した。その背景には滴滴の創業者、程氏の性格と強力なサポーターを得るための戦略があった。
配車サービスの米Uber Technologiesを2009年に立ち上げる際、当時32歳だった創業者のカラニック氏は、企業家や有名人たちとの交流についてツイートし、高額ワインを振る舞ったパーティーの写真を投稿した。
一方、中国の同業大手、滴滴出行の創業者、程維氏は、カラニック氏とは対照的に派手さとは程遠い生活を送っていた。2012年に滴滴を設立する際、程氏がブログに書き込んだのは、「そろそろ年老いた母親に何かをするべきだ。両親には毎週電話をし、休暇は両親と過ごすことを約束する」であった。
それから4年間、Uberと滴滴は中国配車サービス市場を巡り、まさに激闘を展開し、最後に白旗を上げたのはUberであった。関係者によれば、Uberとの戦いで滴滴に追い風となったのは、程氏の控えめな性格と年長者を敬う姿勢だったという。
程氏は阿里巴巴集団(アリババ)やテンセントの創業者を味方に引き入れ、滴滴の事業拡大について助言を受け、資金面でも支援を得た。滴滴はまた、アップルや百度(バイドゥ)からも出資を受けた。コンサルティング会社ADGのゼネラルマネージャー、クリス・デアンジェリス氏は「配車サービスの中国大手を作り出そうと、中国の3大ネット企業(アリババ、テンセント、バイドゥ)が集結したのは前代未聞だ。その結果、滴滴はゲームをものにした」と指摘する。
程氏は昨年に開催された起業家の会合で、Uberが対中戦略を整えた時、テンセントやアリババ、レノボの創業者らに助言を求めていたことを明かした。ネット上に掲載された同会合のビデオによると、レノボの柳伝志氏はカラニック氏を身動きできなくするため、ゲリラ戦を仕掛けるように助言。テンセントの馬化騰氏は、真正面からUberと戦うことをアドバイスしている。アリババの馬雲氏は「帝国主義は張子の虎だ。2-3年戦いを引き延ばせば、カラニック氏は自ら墓穴を掘るだろう」と助言した。
程氏は1983年に江西省で生まれ、北京化工大学で経営管理学を学んだ。その後入社したアリババでは、企業間の電子商取引サービス部門の営業職に就いた。若いが有能なマネージャーとして評価を高め、出世階段を駆け上がって、同社で最年少の地域マネージャーとなった。
時も味方した。程氏が滴滴を創業したとき、テンセントはモバイル決済市場に参入し、アリババの「アリペイ」との競争に乗り出していた。テンセントは、配車サービスがモバイル決済の普及を後押しするとみて、滴滴の初期からの投資家となった。滴滴は成長するにつれ、ソフトバンクやシンガポール政府系投資会社テマセックなど有名な投資家を次々に引き込んでいった。
2014年に程氏は、レノボの創業者の娘でゴールドマン・サックスの幹部だった柳青氏を採用した。英語が流暢な柳氏は海外で滴滴の顔となり、アップルの出資を勝ち取った。GGVキャピタルのマネージング・パートナー、Jixun Foo氏は「私が驚いたことの一つは、程氏が柳氏に全面的に権限を与えたことだ。創業者が自分のエゴを脇に置くのは簡単ではない」と語った。
程氏は、中国の規制当局者も取り込んだ。配車サービスに関する政府規制案の原案は、滴滴の事業曽台無しにしかねないものだった。そこで程氏は数カ月間に及ぶ水面下のロビー活動を展開し、政府の最終案では滴滴の事業モデルにほとんど手を加える必要はなくなった。
程氏は規制当局を公然と称賛し、昨年9月にシアトルで行われたハイテク各社首脳の会合では、習近平国家主席ら中国指導者らと共に登場した。
国内で外国プレーヤーと戦う時は、愛国カードが強力なカードになるのは間違いない。滴滴の程氏は、そのカードを最大限に利用する方法を知っていたようだ。
以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
www.wsj.com
Before handing rival Uber its first major defeat, Didi founder Cheng Wei won support from China’s tech giants and wooed the country’s regulators.
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