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ルネサス、インターシル買収で狙う車載半導体市場

 

hands-1063442_960_720Wall Street Journal紙によると、半導体大手のルネサス・エレクトロニクスが、米同業インターシルを30億ドル(約3000億円)で買収する方向で協議に入っているようだ。かつてのiPhone向け半導体サプライヤーが、次に狙う市場としてアップル等の開発する自動車向け半導体の供給を目指している模様。

NEC、三菱電機、日立製作所の半導体事業統合で誕生したルネサスは、2011年の東日本大震災で主要工場が大きな被害を受け、経営危機に陥った。ルネサスは売上高の減少を受け、12年に官民ファンドの産業革新機構や主要取引先のトヨタ自動車、日産自動車から支援を受けた。同時に車載半導体事業に集中するため、非中核事業の切り離しを始めた。その過程で14年、iPhone向けに半導体チップを納入していた子会社ルネサスエスピードライバの過半数株を米シナプティクスに売却した。

電気自動車や自動運転車開発の時流に乗って、ルネサスは直近2年の通期決算で黒字を計上した。だが車載半導体市場のトップの座は、買収で規模を拡大する競合社の入れ替わりが激しい。オランダのNXPセミコンダクターズは昨年、米フリースケール・セミコンダクタを買収して首位を奪った。独インフィニオン・テクノロジーズも、米インターナショナル・レクティファイアーを傘下に収めた。

これらの買収・合併にも関わらず、車載半導体市場は依然として分断されている。上位5社のシェアを合わせても市場規模の半分に届かない状況だ。ルネサスは今回の買収で、新技術の獲得と、市場シェアの拡大を実現できる。

車載半導体事業がインターシル全体の売上高に占める割合は13%だが、成長は著しい。インターシルは同事業が年20%を超えるペースで伸びると見ている。ドイツ銀行によると、インターシルの省エネ技術をルネサスの半導体に応用すれば、電気自動車のバッテリー消費を抑えられる可能性がある。

business-1219875_960_72030億ドルという買収額はインターシル株価の前週末終値に42%のプレミアムを上乗せした水準だ。予想PER(株価収益率)は約30倍。決して安いとは言えないが、フリースケールを買収するために増資が必要となったNXPとは違い、ルネサスは40億ドル近くの手元資金がある。

リスクとしては、国家安全保障に関わるインターシルの軍事・航空宇宙事業が指摘される。米フェアチャイルド・セミコンダクターは今年、中国国営の華潤微電子から受け取った買収提案を規制上の懸念から拒否した。日本と米国が同盟関係にあっても、米国が軍事機密を保護する必要は残る。ルネサスがインターシルを手に入れるには、インターシルの軍事関連事業の一部を手放すことが求められるかもしれない。

ルネサスはここ最近にルネサンス(フランス語で「再生」の意味)を遂げて見せた。インターシルの買収は同社の更なる飛躍を後押しするに違いない。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

http://www.wsj.com/articles/renesas-intersil-putting-down-chips-for-automotive-jackpot-1471864344

www.wsj.com
Renesas, a one-time supplier of chips to Apple iPhones, looks to be paving the road to supply the likes of Apple’s cars.

 

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