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異色の成功者-自動車・鉄道業界からDe BeersのCEOへ

 

世界一有名なダイアモンド採掘会社De Beers。2011年にこの会社のCEOに就任したのはまったく異色な経歴の持ち主でした。

 

60歳のフランス人、Philippe Mellier(フィリップメリエ)氏は35年前にフランスのビジネススクールINSEADを卒業し、以降フォード、ルノー、Alstrom(仏鉄道輸送システム・インフラ大手)と、ダイアモンドや鉱業とは全く異なる産業に身を置いてきました。そんな彼について「全く違う業種のCEOが務まるのか」と半信半疑だった関係者は少なくありませんでした。
 

しかし4年後、De Beers社のCEO人事は成功だったことが証明されます。
 

「私は常に自分が好きな商品や製品のために働くことをモットーとしてきました。この小さな原石が世界で最も高価な宝石店に並び続けている歴史は神秘的で魅力的なことであり、私はすぐに魅了されました。それに業界トップのブランドを誇るDe Beersでダイアモンドと働けるなら、こんなに楽しいことはない。それに、私が以前いた業界での経験はDe Beersの経営に活かせることが多い。車もトラックも鉄道も、ブランドマネジメントが大切だし、しかも政府の影響を大きく受ける産業です。De Beersの大株主(ボツワナ政府)と交渉するときに、当時の経験が大きく生きているのを感じます。」とメリエ氏は語ります。
 

De Beersの販売網の構図も、自動車業界と似ています。De Beersが厳選された歴史ある顧客のみにダイアモンドを販売する機会を与えているのと同じく、自動車会社も昔ながらの家族経営の自動車ディーラーと長期的取引関係にあり、信頼構築に努めています。
 

university-519606_960_720学生時代、メリエ氏の夢は医者になることでした。しかし、父も祖父もエンジニアだった彼の家庭では、メリエ氏もエンジニアになるよう後押しをされ、彼はフランスのグランゼコール(高等職業教育機関)の一つであるエンジニアリング専門の学校に通いました。しかしすぐにエンジニアになることは彼のキャリア目的に全く適っていないことを悟り、グランゼコールを辞め、INSEADに入学します。そこでビジネス、財務、マーケティング等の学問を世界中から集まった学生と学ぶことに感動したのです。
 

「ビジネススクールでは、いかに効率的にチーム単位で働くことが重要かを学ぶ。フランスのグランゼコールでは学べないことだ。私はビジネスをわかっている人々とビジネスがしたいと強く思うようになりました。」
 

彼がINSEADを卒業した1980年代当時の花形業界はコンサルティング業界でした。彼の大勢の同期も卒業後コンサルティング会社に就職していきます。メリエ氏はフォードとコンサルティング会社の内定を受け、一度フォードに辞退を告げました。その時、フォードのシニア・マネージャーはメリエ氏にこう言ったそうです「君はバカだ。どうして働いたこともない人間が、コンサルタントになって企業にアドバイスをするんだ?悪いジョークだ。そんなにコンサルタントになりたいなら、うちで一度実際の業界を経験してからだって遅くないし、その方がよっぽど重宝されるコンサルタントになれるぞ。」
 

メリエ氏は、この時の彼の言葉を忘れないと言います。フォードの担当者の言っていることは正しいと思い、フォードに就職することを決めたのです。
 

メリエ氏は「フォードでの経験は非常に貴重だった。非常に優秀な上司と非常にいい仕事ができた。会社のエグゼクティブになるために最高の教育と訓練をフォードは与えてくれた。」と語ります。フォード時代に販売記録を効率的に把握するためコンピューターの導入を指揮し、画期的な成功を納めた時に、ボスでなくても会社に変化をもたらすことができるのだとも確信しました。その後メキシコやニュージーランドに赴任します。しかしデトロイトへの赴任礼状を受けた時、家族のことを考えたメリエ氏はフォードを辞し、仏ルノーに転職。トラック販売を手掛けます。そしてその後Alstomに転職し、最高速度575kphの車体をフランスに納入します。
 

Alstromに転職した8年後の2011年、De Beersの当時の株主であったOppenheimer家のヘッドハンターから連絡を受け、De Beers CEOへの転職への道を掴んだのです。
 

 

 

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2011年、De Beersは経済危機からの脱却に苦心していました。ダイアモンド需要は激減し、ダイアモンド業界全体に対する規制の変更から、長年ほぼ独占の地位を有していたDe Beersも、競争に晒されるようになりました。メリエ氏はカナダからボツワナまで地球上に有するダイヤモンド鉱山の管理を効率的に行い、宝石店との良好な関係を維持し、ブランド価値の向上に努め…とアップストリームからダウンストリームまで目を配ります。 まだまだ課題があると言います。「私がDe BeersのCEOに就任した時の雇用契約にはこう書いてあった。『次の10年を、De Beersの今後100年の成長の準備の為に使うこと』と。道半ばだが、準備は着々と整っている。」
 

以上、Financial Timesから要約引用しました。
 

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