ギリシャ債務問題 - トマ・ピケティ氏 ドイツのかたくなな姿勢を非難
何カ月も紙面を賑わせてきたギリシャ債務問題。
ギリシャ vs IMF、ECB、及びEU。ギリシャ vs アンジェラ・メルケルの構図を見て、対戦勝国賠償金に喘ぐ第一次大戦後のドイツと、国際機関への債務返済に窮迫するギリシャが重なって見えたのは筆者だけではなかったようです。
「21世紀の資本」で日本でも一躍著名になったフランスの経済学者、トマ・ピケティ氏は、「ドイツは第一次世界大戦後の対外債務も、第二次世界大戦後の債務も返済しなかった」と指摘し、「メルケル氏は他の国に説教できるような立場にはない」と述べました。
また、戦後のドイツ経済の奇跡的復活は少なくとも過去に債務免除を受けたことが一助になったとの見方を示し、ギリシャに対しても同様の措置が取られるべきだと主張しました。ドイツは1953年のロンドン債務協定で、対外債務の60%が免除されました。
ピケティ氏は、「ギリシャが大きな過ちを犯してきたことは間違いない。2009年の財政危機に陥るまで、ギリシャ政府は財政をごまかしてきた。
しかしそうだとしても、ギリシャの若い世代には責任はない。将来に目を向けることが必要だ。欧州は債務免除と将来への投資の上に築かれた」と述べました。
その上で、第二次世界大戦後と同様の、欧州の債務全体について議論する国際会議の開催を求め、「ギリシャだけでなく、複数の欧州諸国の債務再編は避けられない」と述べました。
また、債務が再び膨らむ事態を回避するため、ユーロ圏諸国の財政赤字の規模を管理・決定する新たな欧州機関の設置が必要だと主張。ギリシャにユーロ圏離脱を迫る政治家は「歴史のごみの山に行きつくことになるだろう」とコメントしました。
以上、Wall Street Journalからの要約引用ですが、ピケティ氏が言いたいのは、一度ユーロ加盟国になったら永遠に離脱はない - ユーロ圏設立時の理念に立ち返り、揺るがすなということです。ユーロ圏の仕組みは複雑です。ユーロを通貨として使用する国は19ヶ国、それぞれが独立の財政政策を持っているところが悩みどころなのです。
しかし、一度加盟したからには、劣等財政国家を脱落させるのではなく、ユーロ加盟国全体で救済するのが長期的にはユーロ圏全体の利益ではないのでしょうか。
日本全国どこかの都道府県が破綻した場合、その地域で円の流通をやめるという選択肢はなく、日本がその自治体を救済するというのが前提なのと同じです。
大げさかもしれませんが、第一次大戦後、賠償金支払いに困窮したドイツでヒトラー率いるナチ党が躍進した悪夢を思えば、この段階でギリシャをこれ以上追い詰めないことが将来の政治リスクを減らすことにつながるとも言えると思います。ギリシャ問題は本当に正念場です。
http://www.marketwatch.com/story/story?guid=3BA35A4C-23E3-11E5-AF7C-364D88AB7A25
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