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ハリウッドを飲み込む怪物「ネットフリックス」

 

日本にも進出したNetflix。動画ストリーミングサービスのみならず、自社でハリウッド俳優を使ったオリジナル・ヒットドラマを制作するなど、その存在感は既存のメディアを警戒させるに足る企業へと成長した。同社株価は過去5年間で8倍の成長を遂げている。

米メディア・娯楽大手21世紀フォックスのテレビ番組制作部門のバイス・プレジデントであったタラ・フリン氏は昨年8月、上司のオフィスを訪れ、会社を辞めて動画配信大手ネットフリックスに転職することを告げた。フォックス21・テレビジョン・スタジオ責任者のブレット・サルケ氏は「ネットフリックスは最大の敵だ」と言う。ネットフリックスがフリン氏の採用を正式決定したことを受け、フォックスは、「幹部を引き抜くために「恥知らずな行動」をした」としてネットフリックスを提訴した。

これは珍しい転職ではない。関係筋によると、21世紀フォックスの従業員約20人が最近、ネットフリックスに移籍した。さらにネットフリックスは、米ケーブルテレビ(CATV)最大手コムキャスト傘下のNBCユニバーサル・テレビジョンの幹部ステイシー・シルバーマン氏のほか、ソニーやウォルト・ディズニーなどの幹部を引き抜いた。

ネットフリックスがオリジナル番組制作を始めたばかりの新興企業から、今年は70余りの作品制作を予定するほど予算が潤沢な大手企業へと変貌するにつれ、ネットフリックスとハリウッドの映画製作大手との間で緊張が高まっている。フォックスとネットフリックスとの法的争いは、こうした緊張の一端を示しているにすぎない。

ネットフリックスは、子ども向け番組、視聴者参加などのリアリティー番組、さらには4000万ドル(約40億円)をかけてスタンドアップ・コメディアンのクリス・ロックが出演する2つの番組を制作するなど、新たな分野にも進出している。同社のオリジナル番組は台本のあるドラマやシットコム(シチュエーション・コメディー)が中心だっただけに、一部のテレビネットワークはネットフリックスのこうした変化を脅威に感じている。

ネットフリックスが今年オリジナル番組の制作や番組購入に投じる資金は60億ドル(約6600億円)余りと、昨年の50億ドルから増える見通し。これは、タイム・ワーナー傘下HBOの支出額の2倍余り、21世紀フォックス傘下FXやCBS傘下ショータイムの約5倍に相当する。英国女王エリザベス2世の若き日々を描いたドラマシリーズ「ザ・クラウン」では、1話当たり1000万ドル近い大金を投じた。

ネットフリックスの驚くべき支出に加え、アマゾン・ドット・コムなど新規参入組も多額の投資をしている。このため、業界全体で制作コストが上昇し、人材や設備なども不足している。

テレビ局や映画製作会社はこれまでネットフリックスなどの成長を支えてきたが、今や競争相手となっている。10年ほど前に動画ストリーミングサービスによってDVD販売が急減した時、テレビ局や映画製作会社はネットフリックスへの番組ライセンス供与が新たな収入源になると見なされた。実際ストリーミングサービスは、制作費の高い作品の寿命を延ばした。だが現在ネットフリックスはオリジナル番組制作会社の直接のライバルと見なされ、ディスカバリー・コミュニケーションズなど一部のメディア会社は番組のライセンス契約を縮小している。

コスト高騰に直面しているテレビ各社の幹部は、新たな脚本家、プロデューサー、低コストのスター発掘に一段と注力している。スクリップス・ネットワークス・インタラクティブは、インスタグラムで見つけた住宅リフォームに関心のあるカップルを起用して、住宅情報チャンネルHGTVの番組「ホームタウン」を制作した。ユーチューブの人気者を起用した番組も手掛けている。NBCユニバーサルはバズフィードと組み、人気の高いウェブ動画とニュースコンテンツを基に番組を制作する方針を明らかにしている。

制作者やタレント事務所は、ネットフリックスの番組や映画に出演するタレントにとって不利な面について声を上げ始めている。例えば、ネットフリックスの幾多のコンテンツに出演しても相応の宣伝をしてもらえないことなどだ。だが、効果は限定的である。逆に多くのハリウッドスターはネットフリックスのオリジナル番組に出演する機会を歓迎しているようだ。ネットフリックスは、より多くの前払い金の支払いを提示するほか、1シリーズの話数が少ないため、より柔軟な撮影スケジュールを提案する傾向がある。

テレビ業界やウォール街の一部関係者は、ネットフリックスが特に海外で十分な会員数を確保できるのか疑問を呈している。猛烈な支出ペースを支え、昨年の利益に基づく株価収益率(PER)が300倍以上に相当する600億ドルに上る時価総額の妥当性を立証できるのか疑問視する声もある。昨年の有料会員数は前年に比べ25%増加し、9400万人弱となった。

ネットフリックスは業界の常識を変える主力となっているようだ。視聴者としては、安価で質のいい番組や映画を享受できるのは喜ばしいことであり、同社のビジネスモデルの今後も同様に興味深い。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

http://jp.wsj.com/articles/SB11500019099593664650904583048120292110346

米メディア・娯楽大手21世紀フォックスのテレビ番組制作部門で飛ぶ鳥を落とす勢いだったタラ・フリン氏は昨年8月、上司のオフィスを訪れ、会社を辞めて動画配信大手ネットフリックスに転職することを告げた。

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