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三菱マテリアル、「都市鉱山」処理で世界最大に 〜スマホやEVから希少金属を回収

 

スマートフォン、パソコンやEVのリチウムイオン電池製造に欠かせない希少金属は、今後ますます拡大する需要を傍目に、その自然埋蔵量には限りがあり、また鉱山開発、採掘にはコストがかかり、環境・労働条件への負荷という副作用もある。一方、廃棄される電子機器は大量であり、それらに含まれる金や銀、ニッケルやコバルトなどの希少金属の回収が非常に重要とされている。大量廃棄される電子機器の山は「都市鉱山」と呼ばれ、そこから希少金属を回収する市場は環境規制が厳格化されている先進国では市場の成長を見込む。経済成長と共に、中国や東南アジアなどの新興国でも「埋蔵量」が増えており、同様に、今後回収ビジネスの拡大が見込まれている。

三菱マテリアルは使用済みパソコンやスマートフォン(スマホ)など「都市鉱山」に眠る金や銀など希少金属の回収・処理事業を拡大する。回収設備を120億円かけて増強。処理能力を4割増の年間20万トンまで引き上げ世界最大規模にする。車各社が増産を計画する電気自動車(EV)からの回収事業にも参入する。スマホやEVの需要拡大をにらみ、希少金属の供給不足に備える。

パソコンやスマホなど電子機器のリサイクルでは、集めたスクラップに含まれる金属の品質を評価する施設を2018年度からオランダで稼働させる。海外で初めての処理拠点となる。昨年に設立した現地会社も含めた総投資額は約40億円。これによりスクラップに含まれる金属含有量の評価期間を大幅に短縮でき、欧州で発生する都市鉱山の集荷を効率化できる。

こうした都市鉱山を処理する主力拠点である直島製錬所(香川県直島町)では金属元素を高精度に分別する設備や、高温で金属を熱することで不純物を除去する前処理炉を増設する。投資額は60億~80億円。21年度からの本格稼働を目指す。この結果、電子機器から金や銀、銅などを回収する能力は、現在の年間14万トンから21年度には4割増の20万トンとなり、世界最大規模となる。

EVに搭載されるリチウムイオン電池からニッケル、コバルトなどの希少金属を回収する事業にも参入する。駆動源に使われるリチウムイオン電池は、銅やアルミなどのほか、ニッケルやコバルトなど埋蔵量が少なく生産地が偏在しているレアメタルが含まれている。このほど、発火の危険性がある車載用電池を安全に輸送・解体する実証試験を開始した。使用済みのリチウムイオン電池が内蔵されている電池ユニットを複数の車種から回収する。

鉱山から採取するより希少金属の含有量が多い都市鉱山は非鉄金属大手にとって魅力的な事業だ。鉱山開発が進み、希少金属の採掘費用が膨張していることも、各社の事業拡大を後押しする背景にある。

三菱マテリアルのほか、DOWAホールティングスは、プラチナ(白金)、パラジウム、ロジウムの貴金属を含むガソリン自動車の排ガス触媒の回収を強化している。触媒を溶かす電気炉を増設し、20年の処理能力を現在から4割増に引き上げる。排ガス規制の強化が進む米欧で廃触媒が増えるとにらみ、集荷網を増強している。

JX金属は半導体産業が盛んな台湾のほか、米国に集荷拠点を設けている。リチウムイオン電池の正極材大手、住友金属鉱山も車載電池の回収事業を始める。電池メーカーから廃電池を集める。銅とニッケルを回収して、自社で生産している正極材への再利用を目指す。

都市鉱山は現在、世界で年間70万トン取引されているが、26年度には年間110万トンの市場に成長する見通し。三菱マテリアルは市場動向をふまえ、25年度にも処理能力を最大23万トンに引き上げる構想も描く。

 

以上、日本経済新聞より要約・引用しました。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ19H4R_Z10C17A9MM0000/

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