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爆発的成長を続けるUber - 労働市場と交通分野に革命

 

個人の遊休資産や時間を他人の為に活用し利益を得る、「シェアリングエコノミー」と呼ばれる新たな経済活動が、世界規模で猛威を振るっています。その2大巨頭、自家用車の相乗りサービスを手掛ける米Uber(ウーバー)と、自宅の時間貸しサービスを担う米「Airbnb」の爆進が止まりません。岩盤規制でUberを阻む日本でも、「民泊」としてAirbnbは浸透してきています。mercedes-benz-1036354_960_720

 

働き方の柔軟性を求める労働者たちにとって、UberやAirbnbのようなシェアリングエコノミーは魅力的です。実際この2社は既存のタクシー業界やホテル業界にとって、一定の国では脅威になりつつあります。ただ、新しい経済活動分野であるたがめに、規制や労働者保護の制度が整っていないことも課題です。

 

本日の記事では、Uberが爆進している中国の実態を取り上げます。

 

中国・上海から飛行機で3時間半。人口が1400万人に膨れ上がった西部最大の都市、成都。業務用洗濯機の販売会社で営業のマネジャーを務める黄永洋氏(41)の生活は2015年4月以降一変しました。Uberでドライバーの副業を始めたからです。

 

Uberは「タクシー配車アプリ」と称されることも多いですが、語弊があります。日本を含む各国で、既存のタクシー・ハイヤーの配車も手掛けますが、世界規模で見れば、生み出す膨大な利益のほとんどは黄さんのような一般ドライバーと自家用車によるものです。自家用車に相乗りする、という概念からライドシェアサービスと呼ばれます。ウーバーはその新市場を開拓した世界最大手です。客はスマホのアプリで車を呼び、目的地を入力します。1組で車を独占することもできますが、同方向に向かう他人が途中で乗り込む安いメニューもあります。成都では全乗車の約半数が、この複数組の相乗りといいます。決済は利用者があらかじめ登録しているクレジットカードから自動的に引き落とされ、現金の授受は発生しません。

 

money-938269_960_720黄さんが終業後や空き時間にドライバーとなるのは週50-60時間。本業の月収は6000-7000元(約12-14万円)ですが、その6割にあたる4000元(約8万円)ほどの副収入をUberから得ています。月収が1.5倍以上になったということです。

 

「成都の人間は昔からスローライフ。茶を飲んだり、麻雀をしたりして暇な時間を潰していた。でもUberのドライバーを始めてから、だらだらと過ごすことはなくなった。お金も入るし、生活が良くなったと感じている」と黄さんは言います。成都では通常のタクシーよりUberを使う人々が増えています。

 

Uberを手掛ける米Uber Technologiesの設立は2009年。以来、わずか6年で営業エリアは世界67ヶ国、360都市以上に広がりました。同社が開示した最新の情報によると、月に4回以上営業するドライバーは世界で110万人以上。彼らが客を運んだ回数は月1億回を超えます。「旅客を担う組織」として考えれば、世界最大手と言えます。

 

金融市場での評価もうなぎ上りです。上場前に史上最も高い評価額を付けたベンチャーとしてもてはやされており、米紙によるとこれまでの調達額は100億ドル超、企業価値は推定646億ドルに達します。

 

爆発的という言葉で足りない程の勢いで今も成長を続けており、その勢いがしぼむ気配もありません。そしてその爆心地は既に欧米から中国に移り始めています。

 

深刻な渋滞と大気汚染問題に直面しながら、中国のライドシェア市場はまさに倍々ゲームで拡大の一途をたどっています。Uberが2014年に乗り込む以前から、ライドシェアサービスは存在しました。市場を独占していたのがタクシー配車アプリを手掛けていた地場企業の大手2社。2015年2月、その2社が合併し、滴滴快適という巨大企業が誕生しました。そこへUberが乗り込んだことで、市場がさらに活性化しています。

 

Uberの中国市場への熱の入れ方は半端ではありません。米Uber創業者のトラビス・カラニックCEOはめったに人前に出てこず、コメントも出さないことで知られていますが、その彼が2015年9月、中国・北京で開かれたイベントに登場し、こうぶち上げました。

「我々が中国に参入したときに数%だった市場シェアはたった9ヶ月で30-35%に増えた。我々は中国市場だけに12億ドルを投じ、来年までに100都市で展開する。中国は間違いなく米国を超える世界最大のライドシェア市場となるだろう。」

 

skyscraper-14112_960_720事実、Uberは80都市以上でライドシェアを手掛ける滴滴快適を猛烈に追い上げ、既に21都市でサービスを展開。全世界のUberの乗降数に占める中国の割合は3割を超えました。

 

現在では通常のUber利用に加え、Uber Commuteというサービスも浸透してきています。これは、簡単に言えば、客が行先を決めるのではなく、ドライバーが行先を決め、その目的地に行きたい客を募るバスや路面電車のような使われ方です。朝夕の通勤時に利用が多くなるサービスです。Uberがタクシー業界だけでなく、公共交通機関の分野にも食い込んできているということです。成都、上海、北京や米シカゴでUber Commuteが導入され、拡大しています。

 

以上のようなUberの例は、シェアリングエコノミーが、労働市場と既存産業の両方に革命的な変化をもたらしていることを意味しています。日本にも、固定時間勤務はできないけれど、遊休時間を活用して収入を得たいという潜在労働者は大勢います。その労働力をシェアリングエコノミーの形でうまく活用するインフラを作ることができれば、日本の経済もまだまだ行けるかもしれません。

 

以上は日本経済新聞・日経ビジネスより要約引用しました。

 

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO95201150W5A211C1000000/

 

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