米MBA初任給、過去最高に　男女格差は根強く

2021/11/21

米ビジネススクール卒業生の給料は今年になって回復し、過去最高を記録している。

　新型コロナウイルスが流行し始めたときは伸び悩んでいたが、経営学修士（MBA）取得者の初任給は過去最高の水準に達している。労働市場がひっ迫する中で、コンサルティング会社や銀行、IT（情報技術）企業が、一流のビジネススクール卒業生を呼び込んでいることが背景にある。

　ペンシルベニア大学とシカゴ大学のビジネススクールはいずれも、今年の卒業生の年収の中央値が15万5000ドル（約1800万円）となり、5000ドル増加したと報告している。ペンシルベニア大のビジネススクールでは、基本給の中央値としては過去最高額となる。同校では就職活動をする学生の99％が内定を得る。デューク大のビジネススクールによると、MBA取得者の平均年収は昨年から4％増加し、14万1000ドル超となっている。こちらも過去最高額だ。

　サプライチェーン（供給網）の混乱や将来の仕事に対する不透明感など、コロナ禍に関連した経営上の問題により、さまざまな企業が以前にも増してMBAのスキル保持者に高い給料を支払いたいと考えている。

　こうした企業の多くは業績が好調で、ゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーといった大手金融機関もキャリアを歩み始めたばかりのプロフェッショナルの給料を増やしている。

　大学院の他の学位と比べ、MBAは求人市場で成功しやすい。ウォール・ストリート・ジャーナル（WSJ）が米連邦政府のデータを分析したところによると、ほとんどの大学院卒業生は通常、借りていた資金よりも稼げるようになるには卒業してから2年はかかる。

　MBA取得者の給料はコロナ禍前、概してうなぎ上りだったが、コロナの影響で企業は例年の採用計画を棚上げした。非営利団体の経営学修士課程入学審査会（GMAC）によると、全米各地のビジネススクール卒業生の年収中央値は昨年、10万5000ドルで横ばいだった。だがGMACが企業の採用担当者を対象に行った最近の調査によると、今年は労働市場の回復が続いているため、過去最高の11万5000ドルに達する見通しだという。

業種を問わず、ビジネススクール卒業生の獲得競争は激化していると、デューク大ビジネススクールのシェリル・ダークス氏は話す。「MBA取得者にはかつてないほど多様な就職機会が訪れている」

　コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーの場合、MBA取得者の需要はこれまでになく高まっている。顧客のリクエストに応え続けていくためには、より多くの人材を確保する必要があると、同社の採用責任者であるキース・ビーバンス氏は言う。給料は毎年、増加傾向にあったが、今年は大幅に上がったと明かす。