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米で離職者が過去最多 何が起きているのか

 

今年4月~8月に2000万人近い労働者が自発的に離職

 米連邦政府の最新データによると、米国では今年4月から8月までの間に自ら離職した人が2000万人近くに上り、前年同期から60%以上増えた。この数字には定年退職者は含まれないが、転職や大学などでの学び直し、家族の世話、休養などさまざまな理由で辞めた人のほか、同一人物による複数回の離職が含まれる。

 労働統計局の補足データを見ると、失業状態を経由しない転職率は安定的に上昇しており、多くの人が働かなくなったのではなく、転職していることが分かる。4月から8月までの間に米国の労働力に約200万人の雇用者が加わったが、この水準は新型コロナウイルスが大流行する前よりまだ3%近く低い。

 労働統計局によると、8月の離職者数は季節調整後で430万人だった。8月は夏休みにアルバイト的な仕事をしていた多くの10代、20代の若者が学校に戻るために仕事を辞めることもあって、以前から離職者は多いものの、この水準は同局が2000年に離職者数の集計を開始して以来最多となった。

 非常に多くの企業が採用計画の達成に苦労している理由の一つは離職者の多さにある。同時に、求人の多さや賃金上昇、企業の人材獲得競争が重なり、労働者にとって今ほど有利な状況はめったにない。

 コロナの流行があまりにも長く続き、精神面および肉体的にも人々に影響を及ぼしている。それによって人生とキャリア、仕事について深く考えざるを得ない状況が続いている。現在米国の求人件数は1000万を超えている。別のことがしたければ、ひどく難しいことではない。

 業界で見ると、夏の終わりには医療、小売り、食品サービスで離職率が特に高く、地域別では中西部や南部で離職率が上昇した。テキサス州やフロリダ州には観光・旅行やホスピタリティー関係を含め離職率が最も高い業界が集中している。

 一般的に離職するのは主に勤続年数が短い従業員だ。労働力分析会社ビジアーが米国の大手企業50社の数十万人の従業員について分析したところ、今年1月~8月は勤務年数の長い従業員の離職率も前年同期比で上昇した。勤続年数15年まででみると、どの年数でも離職者数が前年同期比53%~57%増加した。40代の従業員は若手と比べて一般的に離職の可能性は低いが、今年は離職者が多く38%超上昇した。

 リンクトインによれば、離職に関する検索が1年前と比べて20%増加した。 同プラットフォーム上では#greatresignation(大量離職)、#newjob(新しい仕事)、#jobhunt(職探し)、 #burnout(燃え尽き) といったハッシュタグのフォロワー数が数万に上った。調査対象となった米労働者人口の48%が積極的に職探しをするか、機会をうかがっていることが分かった。単純労働・時間給の仕事から高給の専門職まで、どの職種でも職探しをしている人の割合はほぼ同じだった。

 求人への応募は増えたが、労働力需要には追い付かない。企業と求職者の活動を調査する求人ソフトウエア会社iCIMSによると、9月の求人は1月以降、86%増えたが、応募は8%増だった。

 専門家が大量離職のそもそもの原因を突き止めようと、失業保険給付の延長や保育危機、ワクチン接種義務などあらゆる要因に目を向ける中、企業は人員確保に取り組んでいる。

 従業員の離職を阻止する上でとりわけ大きな役割を果たしてきたのは有能な管理職たちだ。リーダーを慕う従業員を引き抜くには約20%を超える賃上げが必要であることが分かっている。職場における女性の地位向上に取り組む非営利団体カタリストが公表した調査によると、共感力の高いマネジャーと働く女性はコロナ関連の燃え尽きの経験が少なかった。自分の生活を取り巻く状況が会社から尊重され、大切にされていると感じる女性で、離職を一度もまたはほとんど考えたことがない人は白人で57%、有色人種で62%に上った。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/whats-driving-americas-workers-to-leave-jobs-in-record-numbers-11634312414?mod=Searchresults_pos2&page=1

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