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ウォール街「働き方」で分断、巨人2行は出社派

 

ゴールドマンとJPモルガン、出社要請で優秀な人材を失う恐れも

新型コロナウイルス後の勤務形態を巡って米ウォール街が割れている。社員をオフィスに呼び戻す企業がある一方で、今後も在宅勤務を認める企業もある。

ゴールドマン・サックスとJPモルガン・チェースの米銀巨人2行は、ニューヨークで週5日のオフィス勤務態勢を拡大するなど、強硬なアプローチを鮮明にしている。これによって優秀な人材を失う恐れがあるにもかかわらずだ。一方で、シティグループなどライバル勢は一段と柔軟な姿勢を売りにしており、有力なトレーダーやディールメーカーの引き抜きに余念がない。

オフィス勤務を全面的に復活させるべきか、またどう実施すべきか。これは米企業全体が対応を迫られている問題だが、JPモルガンのジェイミー・ダイモン氏やゴールドマンのデービッド・ソロモン氏など、トップが自身の意見を強く主張する米銀大手にとっては、とりわけ厄介だ。

争点となっているのが企業文化の捉え方だ。トレーディングフロアは、インターンや若い社員が現場で仕事を覚えるウォール街の最後のとりでだとの意見がある。その一方で、在宅勤務を強いられた年に業績が過去最高を記録したことで、トレーディングフロアやオフィスが不可欠との考えはもう妥当ではないとの声も聞かれる。

JPモルガンの投資銀行部門スタッフは7月6日までにオフィスに戻るよう指示された。これにはコミュニケーション、テクノロジー、オペレーションチームも含まれる。セールス、トレーディング、分析部門のスタッフは6月に毎日オフィスに出社するよう言われていた。セールスやトレーディング関連の多くのスタッフは、過去1年の大半を通じてすでにオフィス勤務に戻っている。

ゴールドマンのスタッフは6月14日にオフィスに復帰。多数のフードトラック(キッチンカー)が社員を出迎えた。ソロモンCEOは2月、在宅勤務は新常態ではないとの考えを表明。「これは例外であって、できる限り早期に改める」と述べていた。

両行のCEOはオフィスに集まることで、社員の協調性が高まり、良いアイデアを生み出すことができるとの立場で、在宅勤務は生産性が下がるとして不満を示していた。

モルガン・スタンレーのジェームズ・ゴーマンCEOも先月開催された会議で、レーバーデー(労働者の日、今年は9月6日)までに「オフィスに戻っていなければ非常にがっかりだ」と述べている。

一方で、厳しい出社ルールは時代遅れの印象を与えると読んでいる銀行もあり、こうした姿勢が新たな人材を引き寄せる一助になるとみている。コンサルティング大手マッキンゼーの最近の調査によると、社員の半数以上が在宅とオフィス勤務を組み合わせたハイブリッド型を望むと回答した。この割合はコロナ禍前の30%から上昇している。

シティは3月、大半の社員は週およそ3日のオフィス勤務になると明らかにしていた。銀行・資本市場・助言部門のグローバル共同責任者、タイラー・ディクソン氏は「われわれのビジョンでは、元に戻ることはできない。前に進まなければならない」と述べている。

ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループは総じて、チームごとに社員や幹部に最善の策を決定させている。リチャード・ハンドラーCEOは、指令を出してスタッフを呼び戻す必要がないことを過去最高の売上高が証明していると話す。

ハンドラー氏は今月、投資家に宛てた書簡で「当社社員は自宅で動画配信の映画をみたり、孤独なコロナ生活を哀れんだりして、責務から逃げることはない」と指摘した。「当社の歴史において、最も懸命かつ効率的に働いている」

人材紹介業者の一部は、週5日のオフィス勤務を強要することで、大手銀行が取り組んでいる他業界からの人材引き抜きを難しくすると話している。勤務形態が極めて柔軟なハイテク業界などはなおさらだという。

銀行にとどまらず、ヘッジファンドや資産運用会社など金融業界全体で、専門外の分野から新たな人材を求める傾向が強まっており、勤務形態の柔軟性は重要だ。例えば、ゴールドマンは弁護士を求めているほか、JPモルガンは、獲得を目指す人材の対象をエンジニアリングやテクノロジー分野の専門性が高い大学にも広げている。シティはコンピュータープログラミングやコーディングの専門スキルを持つ人材を大量に採用している。

JPモルガンのダイモン氏は、自身の考えに対して、反発があったことを認めている。

「もちろん(反発は)あった。通勤は嫌いな人が多い。だから何だ?」。ウォール・ストリート・ジャーナルが5月に開催したCEOカウンシル・サミットで、ダイモン氏はこう述べている。「顧客のために働かなければならない。自分の都合に合うかどうかが問題ではない。競争しなければならないのだ」

内情に詳しい関係筋によると、JPモルガンはこれまで以上に退職者が増えると予想しているが、全体的な離職率は低いとしている。同行の広報担当は、資本市場関連や顧客とのやり取りを担当していない補助的なスタッフは、週に数日の在宅勤務ができるだろうとコメントした。

プライベート・エクイティ(PE)投資会社では、ブラックストーン・グループが6月、投資銀行業務のスタッフを全面的なオフィス勤務に戻している。カーライル・グループ、アポロ・グローバル・マネジメントは一段と柔軟なアプローチだ。

資産運用業界では、バンガード・グループが大半の社員について、週2日は在宅勤務とする準備を進めている。ライバルのブラックロックは、一定のハイブリッド型勤務を認める見通しだ。業界団体マネージト・ファンズ・アソシエーション(MFA)が実施した5月の調査によると、44%前後のヘッジファンドが週3日のオフィス勤務を検討していると回答した。ウォール街の首脳の一部は、柔軟な勤務形態の促進が時期尚早だったのではないかと自問している。

一例として、UBSグループは全社集会やメモで、ハイブリッド型勤務を強調していた。そのためセールス担当者やトレーダーの中には、一部チームについて9月までに全面的にオフィス勤務に戻るよう指示され、驚きを隠せなかったスタッフもいたようだ。これらの社員によると、ゴールドマンやJPモルガンなど競合他社がオフィスに社員を呼び戻し始めた頃から、会社のトーンが変わったという。

UBSは先週、「役割や任務、勤務地が許す限り」、ハイブリッド型勤務を約束すると社員に伝え、会社の方針を明確にした。

ただ、一つ大きな違いがある。金曜日の扱いだ。キャピタル・ワン・ファイナンシャル、ラザード、バンガードなどでは、多くのスタッフが月・金曜の在宅勤務を認められている。

これに対し、JPモルガンでは、週何日か在宅勤務を認められたスタッフに対して、一部のマネジャーが月・金曜日はオフィス勤務とするよう伝えた。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。
https://www.wsj.com/articles/jpmorgan-goldman-call-time-on-work-from-home-their-rivals-are-ready-to-pounce-11625563800?mod=searchresults_pos2&page=1

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