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同僚との社内ポスト競争 - 上手な競い合い方

 

ジュリー・スウィート氏は今月、社内の競争を勝ち抜いてコンサルティング会社アクセンチュアの最高経営責任者(CEO)に昇格した。スウィート氏が選ばれたのにはさまざまな理由があるが、その中でも一番ユニークだったのは、同氏がCEOの座を競い合った同僚を褒めることに優れていたことだと、同社の人事事情に詳しいある人物は話す。

 同じポストを競い合うときに同僚とうまく付き合うことは重要だ。競争に敗れたとしても管理職としてのキャリアにプラスに働くかもしれない。ただ協力しながら同時に競争するのは難しいことでもある。

 企業の取締役やエグゼクティブコーチによると、社内のCEO候補者が互いに良好な関係にあるかどうかを取締役会が詳しく調査するケースが増えている。モルガン・スタンレーやJPモルガン・チェース、ウォルト・ディズニーなどの大手企業ではCEOの後継者レースは激しく、何年もかかることがある。

 CEOへの最も一般的なルートが内部昇格であることは昔から変わらない。ヘッドハンティング会社スペンサー・スチュアートによると、S&P500種株価指数の構成企業で昨年選任されたトップの約73%は内部昇格組で、2017年は69%だった。今年の夏には、BMW、グラスドア、ニューコア、シュルンベルジュ、バーテックス・ファーマシューティカルズなどが社内から次期CEOを選んだ。

 協調性のある幹部を昇格させるのが今の企業の傾向だ。企業の幹部向けにキャリア助言サービスを提供するウォーターマン・ハーストの創業者でCEOのジャニス・ウォーターマン氏は「今の時代、多くの大手企業がインクルージョン(包括)と協調が重要だとの認識を示している。そうした資質があることで効果的にリーダーシップを発揮できるからだ」と話す。

 アクセンチュアのCEOに就任したスウィート氏は同社の売上高のほぼ半分を占める北米部門のトップを務めていた。事情に詳しい人物によると、CEOレースの最中には、北米部門や同氏の実績を批判する声が社内の一部から上がったが、同氏はそれまでと変わらず前向きだったという。

 昇格を競っているときに、功績の横取りなどライバルからそれとなく妨害されていることに気付くというのはよくある話だ。これは大きなストレスになり、会社の業績にも負の影響を及ぼしかねない。一部の企業は、こうした不当な行為が不必要な職場のストレスや摩擦を生み出すことを避けるための内部システムを作ろうとしている。

 例えば、同じポストを狙う同僚とお互いに中傷はしないと約束すればストレスを軽減できるかもしれない。リーダーシップ開発を手掛けるRHRインターナショナルで取締役会・CEO部門の共同トップを務めるポール・ウィナム氏からアドバイスを受けた数人の幹部社員はこの方法でうまく行った。誰も口にしないけれど重要なこの問題に取り組めば、競争の中で自然に生じる緊張をいくらかは和らげることができる。

 米国で83のホテルを運営するHEI ホテルズ・アンド・リゾーツのレイチェル・モニツ氏は業務担当のエグゼクティブ・バイスプレジデントの候補だったとき、同じく候補だった同僚と別のやり方で協力した。

 モニツ氏はライバルを妨害しているという印象を一切与えないようにしたそうだ。例えばプロジェクトを手掛けるときは、むしろライバルやライバルのグループのために仕事をした。モニツ氏は昇格を勝ち取り、今年1月に新たな役職に就任した。昇進を目指す幹部社員に対して、モニツ氏は昇進したいと手を上げる前から競争相手になりそうな社内の人間と強い絆を築くことを重視するよう勧める。

 乳児用ミルク「エンファミル」などで知られるベビーフードメーカー、ミード・ジョンソン・ニュートリションでCEOの座を競い合ったチャールズ・アーベイン氏とキャスパー・ジェイコブセン氏も、ライバルでありながらお互いに協力することを約束し合った仲だった。2人はジェイコブセン氏がマーケティング担当の中間管理職として同社に入社した1998年から協力してきた。

 当時、既に経験豊富な幹部社員だったアーベイン氏は「「彼(ジェイコブセン氏)が慣れるようにすいぶんと手助けした」と話す。

 ジェイコブセン氏は「その後、お互いに尊敬しあうようになり、親しくなった」と話す。その後のCEOレースでは、2人はお互いを蹴り落とすのではなく純粋に会社のために働き、敗者を社内に残すことを約束した。

 ジェイコブセン氏は2013年にCEOに就任、アーベイン氏はがっかりしたそうだが、会社は辞めなかった。長く働いてきた会社への愛着があり、ジェイコブセン氏に必要とされていたからだという。

 スペンサー・スチュアートの北米CEO部門を率いるジェームズ・サイトリン氏は「私の経験では、CEOに選ばれなかった候補者が(次期CEOの)移行期間後も会社にとどまる例はほとんどない」と話す。「他の会社でCEOになるためや、新しいCEOと合わないという理由で会社を離れることが多い」

 4年前に、ジェイコブセン氏は最高執行責任者(COO)にアーベイン氏を選んだ。2017年にミードが英消費財大手のレキットベンキーザー・グループに買収されると、2人は会社を去った。上記のような話はCEOレースに限らず会社のあらゆるポスト、昇進競争の際によくある話だ。企業の買収・合併の際に2社の社員が同じ職場で仕事をするようになる時も起こりうる現象だ。実際限られたポストを同僚間で競い合う際のストレスは大きく、本来は業績を上げるために使われるべきエネルギーを社内競争を勝ち抜くために費やしたり、競争が職場全体の雰囲気を乱すなど様々な弊害が生まれる。「お互い中傷はしない。人事評価に中傷はマイナスに響く。協力が昇進への最短の近道」という社内ルールを明確化させることは基本的でありながら有効な手段なのかもしれない。もちろん人事評価する側が表面的には見えにくい競争状況を正当に見抜く評価力も必要である。


以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。https://www.wsj.com/articles/among-todays-most-prized-leadership-qualities-playing-nicely-11568815200?mod=searchresults&page=1&pos=3

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