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マイクロソフトは何故リンクトインを買ったのか?

 

blogger-336371_960_720先日、マイクロソフトはリンクトインを262億ドルで買収すると発表した。過去のマイクロソフトによる買収案件の中では破格のサイズである。

1株当たりの買収金額196ドルは、6月10日のリンクトイン株終値に50%上乗せした水準だ。マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は、4億3300万人のユーザーを抱えているにもかかわらず成長が鈍化している赤字企業に、年間売上高の約7倍もの大枚をはたくことになる。

何故か?

マイクロソフトのソフトウェア製品は現在主にオンラインで販売されている。リンクトインは4億人のオンライン・プロフェッショナル・ネットワークを有する。端的に言えば、マイクロソフトはソフトウェア製品売り込み先の顧客情報をネットワークごと買うわけだ。

linked-152575_640それでは何故リンクトインなのか?SNSはリンクトインだけではない。リンクトインより1年遅くスタートしたFacebookは現在16億人の利用者を有する。リンクトインが他のSNSに比べてユニークなのは、それがプライベートではなく、職業履歴に特化したSNSであることだ。職業人の間での欧米でのリンクトインの利用は日本と比べ物にならないくらい活発である。あるプロジェクトを任された職業人は、即座に自分がどのプロジェクトの何を担当することになったかをリンクトインにアップデートする。それはあくまでより良い条件の仕事と給与アップの機会を潜在的に常に探すことが職業人間の文化になっているからであるが、この個人の職業情報を基に、マイクロソフトはリアルタイムで個人のプロジェクトに適したソフトウェアツールの売込みをかけることができるという目論見だ。

リンクトインの持つネットワークは、マイクロソフトのCRM(Customer Relationship Management)ソフトウェアの売上げ増加にもシナジーをもたらす可能性がある。マイクロソフトのCRMソフトウェア売り上げは、現在Salesforce.com、SAP、Oracleに次いで業界第4位である。

マイクロソフトは買収後もリンクトインのブランドやサービス、経営体制を維持する。その上で「オフィス365」「アウトルック」「コルタナ」など自社サービスとリンクトインを連携させる。利便性を高めて双方の利用者拡大をもくろむ。

しかし課題はある。マーク・ザッカーバーグ氏が04年にサービスを始めたフェイスブックの3月末の月間利用者数は16億5400万人。毎日利用するユーザーも10億人を超えている。一方、フェイスブックより1年早い03年にサービスを始めたリンクトインの月間利用者数は1億人強にとどまる。毎日利用するユーザー数は公表すらしていない。15年のフェイスブックの売上高は180億ドルと、リンクトインの6倍に達する。

これだけの差を生んだ大きな理由はユーザーの「エンゲージメント(利用頻度と滞在時間)」の違いにある。フェイスブックは主に家族や友人とのプライベートなやり取りに使われる。リンクトインは自分の学歴や職歴を登録して転職活動に活用したり、仕事で築いた人脈のデータベースの代わりに使ったりするのが一般的だ。14年に米国で実施された調査では、リンクトインのユーザーが1日にサービスを利用する時間は平均9.8分と、フェイスブック(同42.1分)の4分の1以下だった。フェイスブックが時間つぶしの手段になっているのに対し、リンクトインは必要なときにしか利用されていない。ナデラCEOは、リンクトインそのもののユーザー利用頻度を上げる戦略も実施しなければならない。

以上はWall Street Journalより要約・引用しました。

http://www.wsj.com/articles/microsoft-gains-link-to-a-network-1465922927

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