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成功した起業家から学べる教訓

 

この記事の筆者、ノーム・ワッセルマン氏は、南カリフォルニア大学マーシャル経営大学院教授。スタートアップ企業の経営経験から学べる人生教訓は大いにあると、「Life Is a Startup: What Founders Can Teach Us About Making Choices and Managing Change」を執筆した。

起業家精神の素晴らしさは、ビジョンを描き、それを実現させ、時にはひともうけできるワクワク感と自由さだ。だが起業家精神には大抵の人が気づかない別の側面がある。パートナーと共にビジネスを始めることは、家族や友人関係をよくするヒントに満ちているのだ。

 筆者であるワッセルマン氏は20年近く、起業家精神の研究を続けている。2万人の起業家のデータを集め、そのうち数百人にインタビューを行い、数十人について詳細なケーススタディーを実施。その結果、起業家のパートナーシップを成功させる要素の多くが、配偶者同士や親子間の円満な関係にも役立つことを発見した。

以下にスタートアップ企業から学べる教訓と人生にどう当てはめるべきかを解説する。

つらい課題を先にする

我々の大半は面倒な課題に触れようとしない性質がある。だが起業家は苦労した経験から、厄介な問題ほど後回しにすべきではないと学んでいる。非常に厳しい競争環境では、思い通りに動かない製品や、役に立たないチームメンバーを抱える余裕はない。そのため優れた起業家は、問題がありそうな分野を見つけるや、すぐに原因を突き止め、対処するための行動を起こす。

筆者が調べた事例では、友人3人が企業向けソフトウエア会社を立ち上げた。そのうち2人は3番目の友人が本当に別の本職をやめ、全ての時間をこの新会社に費やすのかを疑っていた。彼は安定したフルタイム職を心から楽しみ、また最近子供が生まれたばかりだった。2人が懸念したのは彼が創業者の株を持ったまま会社を去り、彼らが新たに優秀な仲間を迎えるためにその持ち株を使えなくなることだった。

そのため、3人で早々につらい話し合いをすることにした。言ってみれば、関係が悪化する前にあえて「険悪なムード」にしたわけだ。だが、厳しいやり取りの成果はあった。父親になった友人は、ベンチャーの立ち上げと家族の立ち上げの両立は難しいと判断。共同創業者の求めに応じて持ち株を返した。

同じ理屈が人間関係にも当てはまる。筆者の元教え子は、デートでそれを熱心に活用した。初デートで心がけたのは「仮面」をかぶるのではなく、正真正銘の自分をさらけ出し、収入の見込みや将来どこに住むかといった気まずい話題にも踏み込むことだ。

新しい効果的なデート方法を実践した結果、彼は人生のパートナーを見つけ、結婚するための強固な基盤を築くことができた。

「解除キー」を設ける

スタートアップ企業がトラブルに陥る大きな原因の1つは、早い段階で大きな決断をし、後戻りできなくなることだ。多くの抜け目のない起業家が、判断の誤りに気づいたとき、撤退する道を残しておくのはそのためだ。

筆者が話をしたある起業家は、共同創業者となり得る人物と2カ月間、独立したプロジェクトで一緒に働くことにした。仕事への姿勢や相性のよさ、能力について知るためだ。2カ月後、両者は仕事のスタイルが合わないとの結論に達した。一方は「全身全霊で常に」仕事に打ち込むのを好み、もう一方は仕事と家庭に明確な境界線を引くタイプだった。無益な緊張を引き起こすと判断し、別々の道を行くことにした。

一方、ある運輸会社では2人の共同創業者が最初に50対50で出資すると決め、将来にわたって所有構造を変えないことにした。結局、一方のパートナーはあまり仕事をせず、最初の取り決めは「愚の骨頂」だったともう一方が気づいたときには後の祭り。自分が懸命に働くほど、共同創業者は金銭的な恩恵を受ける仕組みになっていることを事あるごとに思い知らされた。彼女は筆者に対し、人生にもワープロソフトの「undo(操作前に戻す)」機能があればいいのにと語った。

 解除キーは人間関係でも同じくらい重要な場合がある。例えばあなたが高齢の母親を思いやるあまり、母親の家を売って自分と同じ共同住宅の一室に転居させることを思いついたとする。だが幸い、母親に提案する前にそれを配偶者に話したところ、自分自身がピンチに陥りかねないことに気づいた。例えば、思春期の子供の育て方といった問題で一家言ある意志の強い人間(この場合恒例の母親)が口出しするならば、あなた自身の結婚生活が続かなくなる可能性がある。

必要なのは元に戻れる選択肢を用意することだ。例えば、家の近くに部屋を借り、母親に1、2カ月間暮らしてもらうのはどうか。引っ越しても大丈夫と思えるまで、元の家を売らずに置いておくのだ。

「平等」には要注意

平等という理想は魅力的に聞こえる。われわれは幼少時から、公正さとは平等を意味すると教えられている。

だが優秀な起業家はそれと異なるアプローチをする。まず持ち株の平等な配分を避ける。時間がたつと大抵は、創業者の少なくとも1人が関心を失ったり、貢献度が低くなったりするためだ。また、平等に役割を分担することも避ける。チームメンバーが互いの領域に踏み込み、得意でない分野にも対処しなければならないことで、緊張が高まる恐れがある。

最も安定したチームにするためには、創業メンバーにそれぞれの情熱や専門知識にふさわしい領域を任せることだ。

そうした構造を作り上げたのが、ある音楽配信サービス会社のケースだ。3人の共同創業者のうち1人は音楽界のカリスマ、1人は経験豊富なスタートアップ経営者、残る1人はテクノロジーの達人だ。3つの領域(音楽、ビジネス、技術)でそれぞれが決定権を握ることにした。同社は最終的に音楽配信の世界で目覚ましく業績を伸ばした。

同様に、配偶者との関係も平等であるべきだと考える人は多い。だが往々にしてそれが不幸の始まりとなる。

 筆者の知るあるカップルは、双方が実質的に同じ作業負担と家庭内の責任を負うべきだと考えた。だがそのためには果てしなく結果を記録し、作業や役割について話し合う必要があった。そしてたびたび自分の能力や楽しみの範囲を超えた作業をする羽目になった。例えば、夫は料理上手だったが、掃除や片付けは苦手。妻はその逆だった。すると汚れた皿や黒焦げの食べ物――それに伴う避けがたい緊張や恨み言も――が2人の日常生活を占めるようになった。

彼らは結局、成功したスタートアップ企業を見習うことにした。全てを真っ二つに分けるのではなく、お互いの違いを認識して受け入れ、担当領域をはっきり決め、自分の強みを明確にした。夫は一言の不満もなしに料理全般をこなした。妻は掃除を引き受けた。芝生の手入れは共に苦手だったため、外部に依頼した。すると突然、「人生を共に歩む」というベンチャーがうまく軌道に乗り始めた。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

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