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ゴーン氏会長解任で浮き彫り、報酬めぐる文化の違い

 

自動車業界で最も尊敬される経営者の1人であるカルロス・ゴーン氏の突然の逮捕は、日産・ルノー連合だけでなく、全世界に衝撃を与えた。ゴーン氏は未だ拘留中であり、外部との接触を断たれている。ゴーン氏の逮捕・会長解任により、日産・ルノー・三菱自連合の今後がどうなるかはまだわからない。

日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の解任により、先進国間でも文化の違いによって企業慣行が大きく異なるエリアが残っていることが鮮明になった。それは、幹部報酬だ。

企業の財務報告の方法は近年、国際会計基準の広範な導入を受けて世界的に収れんしつつある。だが経営陣の報酬の開示度合いを巡っては、おおむね各国が引き続き独自のルールを設けている。

ゴーン氏は約50億円の過少申告があったとの容疑で逮捕され、日産から会社資金の流用を指摘される中、会長職を解かれた。同氏は勾留されており、コメントは得られていない。

 日産がゴーン氏の報酬について義務付けられている開示の水準は、同氏が会長兼最高経営責任者(CEO)に留任しているルノーよりはるかに低い。パリ株式市場に上場するルノーは、ゴーン氏や他の幹部の報酬について多くの詳細情報を提供している。フランスでの世論の批判を受けて、ゴーン氏は今年、ルノーでの報酬を削減された。

日本企業と欧米企業

米国と英国では通常、企業は幹部報酬についてさまざまな詳細を提供する。ロンドンを拠点とするPwCのパートナー、トム・ゴスリング氏によると、幹部報酬の項目が年次財務報告書の10%以上を占めることも少なくない。そうした国々では、企業は報告書に「全てを含む」よう強いられる。これは、経営陣の基本給やインセンティブに加え、年金や手当の情報も全て提供しなければならないという意味だ。

日本では、幹部報酬に関する情報が相変わらず少ない。2010年以来、上場企業は対象年度に1億円以上の報酬を得た役員を開示するよう法律で義務付けられているにもかかわらずだ。例えば日産は金融庁に提出した直近の年次有価証券報告書で、必要な開示に1ページを割き、ゴーン氏と西川廣人社長の報酬の内容を記載している。

専門家によると、報酬に関する記載の違いは社会的傾向を反映している面もある。日本企業は欧米企業に比べると、従業員と首脳陣の給与はかけ離れていない。一方で欧米の一部の国では会社内外での経済的格差が大きな政治的争点になっている。

日本企業の経営陣の給与水準が相対的に低く、報酬の詳細な報告が重視されない背景には、国際的な経営者争奪戦が少ないことやプライバシー尊重などの要因が挙げられている。

 

 

 

ゴーン氏が日産で得ていた比較的高い報酬は、長期にわたってトップに君臨していたことや、有名日本企業の外国人経営者という珍しい地位も反映していた。一方、その高い報酬は、同氏が強すぎる権力を手にしたと日産社内で見られるようになった一因とも考えられる。

みずほインターナショナル(ロンドン)の上田亮子氏は「(日本企業幹部の)報酬は低いものだったので、あまり報酬自体が大きなガバナンスの問題とはならなかった」と指摘。「他人の財布の中身」をのぞくのは良くないとの伝統的な考えも開示が限定的であった一つの重要な理由だと述べた。

欧米諸国で幹部報酬の詳細開示を求める動きがあったのは少し前だ。英国では、民営化された公益会社の幹部が享受していた高い報酬がメディアで批判されたことを受け、1990年代に政府が一段の開示を求めた。

株主も企業の報酬慣行についての情報、特に経営陣の長期的な業績に連動する報酬の設定に使われる基準が投資家利益に一致するか否かを判断できる材料を要求してきた。

PwCのゴスリング氏は「投資家にとって幹部報酬の設定に関する開示は、取締役会の運営方法や、彼らが経営陣からどれだけ独立しているかを知る手段の一つだ」と述べた。

欧州連合(EU)では来年、英国の現行モデルに基づき株主の権利に関する新たな指針が導入され、報酬開示規則が統一される。

確かに、報酬体系の複雑さが企業の開示水準に影響を与えている面はある。日本企業で一般に開示が少ない一因として、欧米企業の幹部報酬パッケージほど業績ベースの賞与や長期インセンティブプランが利用されてこなかったことがある。

それでも、日産での問題を受け、報酬の分野で一段と透明かつ明確に定義された規則を求める声が噴出する可能性もある。取締役選任の株主投票を行う株主総会の開催後に報酬を報告しているという慣行は見直すべき時期に来ているのかもしれない。

例えば日産が2018年3月期の有価証券報告書(役員報酬のページを含む)を提出したのは6月28日。年次株主総会の2日後だった。

日産のスキャンダルを受けてみずほの上田氏は、日本では「もう性悪説に立って制度設計すべきなのかもしれない」と指摘。「パンドラの箱を開けてしまった」感があるとした。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

https://www.wsj.com/articles/ghosns-arrest-exposes-culture-gap-when-it-comes-to-executive-pay-1542988178?mod=searchresults&page=1&pos=1

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