ブラックストーン共同創業者　ピーター　ペターソン氏　91歳で他界

2018/03/22

ニクソン政権で商務省長官を務め、その後プライベート・エクイティ・ファンド　ブラックストーンを創設し、億万長者となったピーター　ペターソン氏が3月20日にニューヨークの自宅で亡くなった。

ペターソン氏は1926年生まれだ。ネブラスカ州のケアニ―でダイナーを営む貧しいギリシャ移民の息子だった。非常に貧しくて、入浴は1週間に1度土曜の夜だけ。それも、家族全員で同じバスタブの湯を使いまわしての入浴だった。アメリカでは考えられないことである。

少年時代の貧困の経験は、ペターソン氏に強い教訓を与えた。「自分が稼ぐ以上の消費をしてはいけない」ということだ。クレジットカード借入による買い物、国債発行異存の米財務支出にペターソン氏は危惧の念を表した。外交評議会会長を22年間務めたペターソン氏はヘンリー　キッシンジャーやデビッド　ロックフェラーと交友を持ち、生涯で7冊の著書を出版した。著作の中で幾度も「アメリカ人よ目を覚ませ。このままでは負債で首が回らなくなる」と警鐘を鳴らし続けた。

ペターソン氏の父は厳しく、ペターソン氏は常に父親を感心させることを意識して行動していた。彼の母親はペターソン氏を溺愛し甘やかした。これが後に「同僚や妻が自分の思い通りに動かいことに対する理解に苦しむ原因となった」と同氏は述べている。

目が悪かったペターソン氏は第二次大戦の兵役を免れる。代わりに彼は一生懸命勉強し、マサチューセッツ工科大学に入学し、奨学金も勝ち取った。しかし1年目に論文を盗作した課題提出を行ったことが発覚し、退学処分となる。当時の学生の間では、論文盗作は日常茶飯事であったらしいが、ペターソン氏はこの出来事を一生後悔したと伝記に書いている。彼は再起奮闘してノースウェスタン大学に入り直し、ビジネスの勉強をした。

大学卒業後、オレゴン州ポートランドのデパートに就職したが肌に合わず、シカゴでマーケット・リサーチの会社に転職した。夜はシカゴ大学に通い、ＭＢＡを取得した。後にノーベル賞を受賞したミルトン　フリードマンやジョージ　スティグラーに師事した。早く結婚したが、すぐに離婚の終焉を迎えた。

次に転職したのは広告会社のマッキャン　エリクソンだ。27歳でバイス　プレジデントに昇格し、顧客のニーズを分析することに明け暮れ、仕事を楽しんだ。その後シカゴで映画撮影用カメラを製造するBell & Howellに転職し、36歳でCEOとなったが、日本勢に押されて事業は縮小の一途をたどった。

若いころの彼は常に成功していたわけではない。しかし、本当に様々な挑戦に積極的に取り組んだ。そして、知識を貯め込んだ。これがニクソン政権の目にとまり、1971年に同政権の国際通商アドバイザーに就任する。1972年には商務省長官に抜擢される。しかし、共和党にも民主党にも親しい友人を持っていたペターソン氏は、直後に共和党ニクソン大統領に解任されてしまう。

この解任劇は、ペターソン氏にとって福と転じた。その後のニクソン大統領のウォーターゲート疑惑から一線を画すことができたからだ。これを機に、ペターソン氏はワシントンではなく、ウォール・ストリートに向かうことになる。

1973年にペターソン氏はリーマン・ブラザーズの会長兼CEOに就任した。大胆な人員削減とコスト削減を行い、数年後にリーマンを高収益に導くことに成功した。しかし私生活では二度目の離婚を経験し、当時は辛い時期だったと自伝に書いている。

1983年に同氏はリーマンを離れ、同僚であったシュバルツマン氏とブラックストーンを創業した。創業当時は、機関投資家から資金を集めるのに苦労したが、後の成功物語は語るに足らずである。ソニーのコロンビアピクチャ―、CBSの買収にもアドバイザーとして携わった。1990年代の不動産不況では、ブラックストーンに不動産投資事業を開設してホテルやオフィスビルの買収を行い、後に巨額の利を掴んだ。

2007年のブラックストーンのIPOでは、同氏は税引き後に10億ドルもの利益を手にした。彼はその利益でニューヨーク5番街にペントハウスを買い、夏の別荘のあるハンプトンへ行くためのヘリコプターを購入した。

2008年末にブラックストーンを退社してからは、ペーター G ペターソン財団を設立し、政治家に負債依存の財政を見直すようロビー活動を行い、若い学生には屋外における「バジェットボール」というゲームを通じた啓蒙教育を行い、このままでは米財政が若者世代に残す負債が致命的な額になることを伝え、教育し続けた。