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主に女性が陥る「中間管理職の罠」への対策

 

経営幹部を目指す女性を支援する企業の取り組み

多くの大企業では、男女社員を問わず、入社時から中間管理職までの道筋は機会均等が実践されていると言える。しかし中間管理職より先への昇進で、道を描けなくってしまう女性は未だに多いようだ。これは、男性中間管理職社員には暗黙の了解で用意されている昇進へのテスト・アサイメントや幹部による後押しという機会が、女性社員には適用されてこなかったことが一因であるようだ。その機会を均等化するため、「男性中間管理職の昇進の為の暗黙の了解制度」を女性社員の為に明確化し、適用する企業が増えている。

米国に関わらず、世界どこでもキャリアの初期に頭角を現したものの、中間管理職から先に進めなくなる女性は多い。この状況を変えるため、独創的な手段で女性管理職を経営陣に引き上げようとする大企業が増えている。

IBM は集中的なリーダーシッププログラムを通じて、潜在能力のある女性にストレッチ・アサインメント(背伸びが必要な課題)を課している。 シェブロン やゼロックスなどの企業は、女性従業員それぞれの生活により適した環境を実現すべく、柔軟な再配置のアプローチを採用している。ソフトウエア会社インテュイットでは、優秀なテクノロジー部門の社員が、コーチングを受けたり、幹部から重要な顧客を任されたりしてキャリアの視界を広げている。

 女性を昇進させようとする動きが増えている背景には、実際の女性の昇進が遅いことがある。非営利団体リーンインとマッキンゼーの新たな研究では、女性が中間管理職に占める割合は前年から横ばいの33%、経営幹部に占める割合は若干上がったものの20%だった。

また、上級管理職の過半数は最高幹部ポストに就くことを希望している一方、その目標を達成できると考えている人の割合は、男性が44%なのに対し、女性は39%だった。

無意識のバイアス

昇進への期待と結果がかけ離れているのは、女性の幹部候補を巡る固定観念の表れだとジェンダー専門家は話す。女性は出世コースで本当のチャンスを与えられていない。「無意識のバイアス、支援の欠如、目標の職務への道筋の欠如が、女性に中間管理職から上を目指すのを思いとどませる主な障壁になっている」という。つまり、「女性たちは必要なアクセルをまだ手に入れていない」のだ。

様々な手法

IBMが2015年に「エレベート(昇進)」プログラムを導入したのは、有望な女性に必要なアクセルを与えるためだ。プログラムの対象は、直接顧客に対応する営業、コンサルティング、技術担当の女性中間管理職。人工知能(AI)とクラウドコンピューティング部門が中心だ。20カ国の成績トップクラスの女性が上司からエレベートを提案された。同プログラムの期間は1年。参加者は、上司の助けを得ながら、個人の成長計画とリーダーシップ計画の両方を立案する。幹部の代わりに仕事をする機会も得る。IBMによると、参加者700人の約半分が既に幹部職を勝ち取った。

その一例がスリー・ラナシンハ氏だ。ノースカロライナ州でマネジャーをしていたラナシンハ氏は、7月に初めて幹部職に就いた。中間管理職時代の部下は15人だったが、現在はクラウドコンピューティング担当のスタッフ40人を抱える。エレベートを通じて、幹部の予算策定を手伝ったり、300人の部門で戦略的優先事項を決めるなど、ストレッチ・アサインメントを3件こなした。取得した貴重なスキルを「幹部職で日々活用している」という。

財務ソフト「ターボタックス」や会計ソフト「クイックブックス」で知られるインテュイットは、別の手段で有望な女性を中間管理職から引き上げようとしている。最近の昇進プログラムで、女性幹部数人が技術部門の女性中間管理職を支援する「スポンサー」役を務めたのだ。スポンサー制度が正式に発足したのは今年の夏。会社が男女20人ほどの幹部と女性中間管理職を組み合わせた。スポンサー役を務める同社幹部のマーリン・セインティル氏は女性に対し、社内外で視野を広げ、安全地帯から踏み出すよう背中を押すことも多い。幹部候補は自分自身の強力なブランドを構築しなければならないという理由からだ。


女性活用に限らず、企業が潜在能力を発掘し、生かすための手法の模索は休むことなく続いている。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

https://www.wsj.com/articles/getting-women-out-of-the-middle-management-trap-1507608361

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