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戦場での経験をビジネス界に、米ビジネス界で存在感増す元軍人

 

戦場での経験をビジネスの場で生かしてもらうーー。複数の米企業で、そんな動きが進んでいる。退役軍人らを招き入れてガバナンス向上やサイバー攻撃対策を強化している企業には、ソフトメーカーの レッドハット やセキュリティーソフト大手 シマンテック などがある。

ジョン・ケリー大統領首席補佐官(退役海兵隊大将)やジム・マティス国防長官(退役海兵隊大将)、H・R・マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官(陸軍中将)など、軍出身者はホワイトハウス内でも影響力を増している。ドナルド・トランプ大統領が「私の将軍たち」と呼ぶこの軍人トリオは、国家の安全保障政策を担う。ホワイトハウスのスタッフらはケリー氏が速やかに規律を持ち込んだと話す一方、マティス氏とマクマスター氏は波乱の多い政権内に安定をもたらしていると与野党から評価されている。

しかし、軍出身者が企業にもたらすのは規律だけには限らない。軍の将官は戦時・平時にかかわらず、未知のリスクを予見し、高度に機能するチームを作り、高いプレッシャーがかかる場面でも素早く戦略的な決定を下す訓練を受けている。海兵隊大尉で今は全米取締役協会(NACD)の最高マーケティング責任者(CMO)を務めるヘンリー・ストーバー氏は、「これら特性はビジネスの戦場でも必要とされるものだ」と述べる。

NACDはこれまで約500人の退役将官を対象に、企業取締役に就任する際の心得を教える3日間の研修コースを行ってきた。そのうち半数は民間や公的機関の取締役を務めるようになっており、その中には金融大手 ウェルズ・ファーゴ 、輸送大手USAトラック、航空部品サプライヤーのウエスコ・エアクラフトなどがある。

人材会社コーン・フェリーのウェンディー・モンセン氏は、特に危機を迎えた企業が軍幹部経験者を求めることが多いと話す。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが昨年実施した調査によれば、軍が公益を第一に考えて活動していると考えている人の割合は約75%以上だった。一方、企業経営者が同じように公益を優先させていると考えている人の割合は41%にとどまった。

サイバーセキュリティー対策や地政学的なノウハウを求める企業を相手にする場合、「クライアント向けの候補者リストには、軍将官の名前が並ぶことが多い」とモンセン氏は話す。

とはいえ、防衛産業以外の企業では、軍出身者が経営幹部や取締役に就いているケースはまだ少ない。ベトナム戦争が遠い過去となる中、兵役経験がある経営者も減りつつある。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによれば、S&P500種指数構成企業のうち、元軍人がトップを務めているのはわずか13社だ。

退役陸軍少将で今は組織リーダーシップに関するコンサルタントを務めるマイケル・J・ダイヤモンド氏は、ビジネス界で成功する元軍人は大声で指示したり序列を押しつけたりするのではなく、異なるグループを共に作業させるノウハウを知っていると話す。

軍出身者もビジネスの世界で学んでいる。陸軍中将だったスティーブン・スピークス氏は7年前に軍を離れ、金融サービス業のUSAAでビジネス経験を積み始めた。企業戦略の策定などに関わっていたが、3年で解雇されたという。今振り返れば、自分の判断についてコンセンサスを得る必要を把握しておらず、同僚が異なる意見を持っていてもそれに気づけなかったと話す。

「かつては機械的に決断を下していた。周りを見渡して反対意見がなければ、それはもう決定事項だった」と同氏は語る。「しかしビジネス界ではいったん決断を下した後も、その決定事項がうまく進むように努力を続けなければいけない」

その後、スピークス氏はフィンランドの荷役機械メーカー、カーゴテック傘下のカルマー・ラフ・テレイン・センターのCEOに就任し、4年目を終えようとしている。今はスタッフにも意見を述べるよう促し、決定事項についても時間をかけて周りからの理解を得るようにしているという。

35年に及んだ軍生活から続く習慣で、今も実践していることもある。現場の状況を確実に把握するため、工場に出向いて会議を開くことも多い。「大きくなりすぎたメーカーのトップは現場から離れてしまう」が、「どのような状況がなぜ起きているのか、現場の従業員たちはすぐに教えてくれる」からだ。

日本の自衛隊と、米国軍人の経験はもちろん大きく異なるが、災害危機対応では迅速さ・危機管理能力を求められるのは自衛隊も同じである。そして交易を考えるという観点では自衛隊も米軍も同じである。日本でも自衛隊が民間企業で活躍し始めたらおもしろい風が吹くかもしれない。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

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