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拡大する中国自動車企業の対外投資、中国政府の目標を反映

 

世界の自動車関連産業では中国企業から給料をもらう労働者が増えている。

中国企業はここ数年、自動車関連分野での投資を続けており、その対象は自動車メーカーだけでなくガラスやタイヤのメーカー、テクノロジー開発業者にも及ぶ。これは将来的に世界の自動車産業の支配を目指す中国政府の目標に沿った動きだ。

中国企業による自動車関連投資は2008年以降で340億ドル超に達している。

中国企業による自動車関連のM&A(合併・買収)などの対外投資は今年上半期は8件、計55億ドル(約6160億円)だった。昨年は通年で9件だった。

今年まとまった案件の中には、経営破綻したエアバッグ大手タカタの買収や、米国の「空飛ぶ自動車」開発業者の買収、インターネット大手の騰訊(テンセント)による米電気自動車(EV)大手 テスラ への出資などがある。

この背景には2つの要因があると見られる。1つは、中国の自動車会社は娯楽など他の分野の企業とは違い、投資対象を慎重に選び、買い得のものを確保してきたこと。もう1つは、中国の自動車産業が世界市場での支配的な地位を得るため、政府から最大限の支援を受けていることだ。

中国企業は多くの場合、部品メーカーや小規模な自動車メーカーを買収したり、外国で合弁事業を立ち上げたりしている。米国の資産は、中国勢の買い物リストの上位に置かれている。

例えば、浙江吉利控股集団(ジーリー・ホールディンググループ)は、買収したボルボ・カーズの工場をサウスカロライナ州に5億ドルかけて建設する。2000人を雇用する予定だ。自動車用ガラスの 福耀玻璃 (フーヤオ・グラス)は、米国の製造施設の建設に10億ドルを投資している。

今年上半期の対外投資8件のうちの1件は、6月の寧波 均勝電子 の子会社によるタカタ買収で、15億9000万ドルが投じられる。この子会社は、寧波均勝が昨年9億2000万ドルで買収した米エアバッグ・メーカーのキー・セイフティー・システムズ(KSS)。

寧波均勝のチェン・ヤン広報部長によると、中国政府は他の分野では国外でのM&Aを抑えているが、自動車産業については自由に投資させている。

中国の自動車メーカーの中で外国企業の買収に最も積極的なのが吉利だ。3月には経営難のマレーシアのプロトンと、同社の子会社ロータス・カーズを2億3500万ドルで買収した。6月には「空飛ぶ自動車」の米新興企業テラフージアを買い取った。買収金額は不明。

外国自動車メーカーを買収するより戦略的な出資を行うことを好む中国企業もある。テンセントは3月、テスラの株式の5%を18億ドルで取得した。中国企業による自動車関連企業のM&Aで過去最大規模は、国有化学大手の中国化工集団が2015年にイタリアのタイヤ大手ピレリを買収した際の78億6000万ドルだ。

寧波均勝のチェン氏は、中国の自動車部品メーカーはまだ、ドイツのボッシュや日本の デンソー のような世界的企業に追いつこうとしている段階だと語る。調査会社バーンスタイン・リサーチの自動車アナリスト、ロビン・ズー氏も、中国の自動車産業は国外での買収を進めているが、全体としてはまだ遅れていると指摘し、「近い将来中国のボッシュが誕生するとは思わない」と述べている。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

https://www.wsj.com/articles/china-aims-to-take-over-car-industry-one-part-at-a-time-1500370204

 

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