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逆風下でのトップ就任―米飲料大手コカ・コーラの最高経営責任者(CEO)に就任したジェームズ・クインシー

 

 ムーター・ケント前CEOの後任として5月1日に就任したクインシー氏は、まさに逆風下でのトップ就任となった。足元では炭酸飲料離れが進む。米国や英国などでは糖分の多い飲料に課税する動きがある。「砂糖税」を導入する各国政府の狙いは、歳入増に加え、肥満や糖尿病の一因となる砂糖の消費を抑えることにある。コカ・コーラは製品群を多様化し、乳製品やミネラルウオーターなども手掛けているが、世界売上数量の70%は今なお炭酸飲料が占める。

 この状況に対するクインシー氏の答えは、コカ・コーラは「総合飲料会社」に変わらなければならない、というものだ。そしてそのためには失敗を恐れてはならない、と語り、何事にも慎重という同社の企業文化を一掃したいとの考えを示した。コカ・コーラは今、もっとリスクを取らなくてはならない時期にあり、失敗を恐れて躊躇することは非生産的だと述べた。同社は1985年に看板商品コカ・コーラの味を変えて「ニュー・コーク」として販売するも全く売れなかったことがトラウマとなっている。

 同氏は「失敗を恐れることが完全な誤りであるかは定かでないが、失敗を恐れて何もしないのは完全な誤りであるはずだ」と指摘。「コカ・コーラとして何か違うことをやろうとするなら、失敗することは重要であり、またそうした取り組みの象徴ともなる」と述べた。クインシー氏によると、同社は131年に及ぶ歴史の大部分を「世界で最も価値のあるブランドの管理」に費やしてきたため、何か変更を加える際には最大限の注意を払うあまり、臆病になっている。

 コカ・コーラの関係者やアナリストの間では、同社は砂糖の問題にもっと早く対処し、消費者の嗜好(しこう)の変化に対応すべきだったとの指摘もある。コカ・コーラは、英国で販売している自社商品に健康被害を警告するラベルを自主的に貼ることに反対していたが、クインシー氏の進言に従い14年にこれに応じた。同社はボトルサイズを小型化したり、低カロリーやゼロカロリーといった新製品を開発したりし始めた。

 今や炭酸飲料よりもミネラルウオーターを好む消費者が増えている米国で、コカ・コーラは「量」を重視した経営から、傘下のボトリング会社と利益を共有する経営へシフトしつつある。後者なら、従来商品に比べて小型でありながら価格は高い商品を販売できる。

 さらに、ボトリング事業の大半を売却し、利益率の高い事業への集中化を図っている最中でもある。その結果、2012年時点で15万0900人であった世界全体の従業員数は来年までに4万人未満になる見通し。

 クインシー氏は本社部門の従業員の20%に相当する1200人を削減する方針だ。また、従業員が同社商品の中で一番好きなブランドとしてコーラ以外の商品を挙げることを正式に認める。「当社が総合飲料会社になるのなら、消費者が最も好きなブランドとしてコーラ以外の名前を挙げても問題ないはずだ。従って従業員が同じことをしても問題はない」と話した。

 10年後か15年後には、炭酸飲料が同社の世界売上数量に占める割合は50%を下回るかもしれないと言う。新興企業への投資を拡大したり新たなブランドを取得したりしてこうしたシフトを加速していきたいと語った。

 「(看板商品の)レッドコーラの成功なくして将来に道はない。炭酸飲料の売上高を伸ばし、それ以外の商品でもシェアを拡大していく必要がある。これを両方実現しなければならない。これからはそうするしかない」と覚悟を話した。

以上、Wall Street Journalより要約・引用しました。

Coca-Cola’s new CEO James Quincey wants the company to shake off a culture of cautiousness that has dogged it for more than a century, stressing the importance of ...

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