コトラプレス (kotorapress)|株式会社コトラ

ビジネスパーソンのインテリジェンス情報サイト

投資銀行に悪夢のシナリオ、M&Aで蚊帳の外

 

wall-street-582918_960_7204月、米大手企業2社が発表した買収にはある共通点がありました。ケーブルテレビ大手コムキャストもバイオ製薬大手アッヴィも、それぞれドリームワークス・アニメーションとステムセントルクス社を買収する際に投資銀行(アドバイザー)を起用しなかったのでです。

そうした動きはこの2社だけに限りません。買収で投資銀行を起用しないという決断を下す企業は増えているのです。調査会社ディーロジックによると、2015年に10億ドル以上の上場企業買収で投資銀行をアドバイザーに使わなかったケースは70件で、これは案件数全体の26%に相当します。2014年の25件(全体の13%)から大幅に増えた状況です。投資銀行を使わなかった例は、2016年に入ってからもすでに23件(全体の27%)に上ります。このところ企業のM&A件数が急増していますが、より目立つのは2014年以来の投資銀行抜きでのディール増加です。

世界の買収案件で投資銀行が使われなかった件数ENLARGE
世界の買収案件で投資銀行が使われなかった件数

これは、数千万ドルから数億ドルに達することもあるM&Aでの巨額の助言手数料収入を得ているウォール街の投資銀行にとっては絶対的に悪いニュースです。タイミングも最悪です。というのも、大手投資銀行を取り巻く環境は厳しく、新たな規制や低金利等、対処しなければならない問題は山積みだからです。

投資銀行抜きでのM&Aが増加している背景には、取引を秘密にしておきたい、必要に応じて素早く動きたい、そしてもちろん費用を節約したいという企業経営者の思惑があります。また一部には、すべての投資銀行が必ずしも顧客の利益を最優先に考えていないという見方もあります。

著名投資家ウォーレン・バフェット氏は2014年にバークシャー・ハザウェイの株主に宛てた書簡でそうした見解を明かしています。同氏は「市場価値に20~50%のプレミアムを上乗せした価格での上場企業の買収を絶え間なく勧めてくる」投資銀行を嘲笑しました。さらに「そうした投資銀行は数年後に戻ってきて、真顔で株主価値を開放するためだと主張し、前回の買収先のスピンオフ(分離独立)を熱心に勧めてくる」と指摘しています。

企業の内側では何が変わったのでしょうか。

一部の企業には今や、投資銀行の支援なしに買収戦略の立案、金融モデルの構築、取引の執行などが行える大規模な社内チームが存在します。コムキャストはモルガン・スタンレーから米国M&A部門の共同統括責任者だったボブ・イートロフ氏を引き抜き、グローバル企業開発・戦略部門のバイスプレジデントに就任させました。同社は4月、映画製作会社ドリームワークス・アニメーションを38億ドルで買収することに合意しましたが、事情に詳しい関係筋によれば、素早く行動する必要性もあったために独自に交渉を行ったといいます。コムキャストの買収チームと銀行出身のマイク・カバナー最高財務責任者(CFO)を含む経営幹部は、2週間ほどでドリームワークスとの合意を成立させたといいます。このような買収案件の通常の助言手数料は最大2000万ドルにもなるが、コムキャストはこの助言費用を節約したことになります。

同じく4月、がん治療薬開発のステムセントルクスを58億ドルで買収することに合意したアッヴィも投資銀行を使うことを避けました。アッヴィは昨年12月、かつてJPモルガン・チェースに勤務していたヘンリー・ゴーゼブルフ氏を最高戦略責任者(CSO)に就任させています。

 

以上はWall Street Journalより要約・引用しました。

http://www.wsj.com/articles/an-investment-bankers-worst-nightmare-1462895679

おすすめ記事

1
独立社外取締役(コーポレートガバナンス・コード)について

コーポレートガバナンス・コード 2014年6月にとりまとめられた「『日本再興戦略 ...

2
独立社外取締役(コーポレートガバナンス・コード)の独立性基準について

独立社外取締役(コーポレートガバナンス・コード)の独立性基準 2014年6月にと ...

3
これまでの社外取締役/社外監査役の属性・兼任等の状況と、今後の 独立社外取締役(東証ベース)の選任についての調査・考察

株式会社コトラによる社外役員実態報告について 人材ソリューションカンパニーの株式 ...

4
職場の同僚と理解し合えないのは性格の不一致~人間関係に現れる価値観のちがい 組織理解vs他者理解~

 職場の人間関係におけるアプローチについて、価値観の多様性から考えてみます。 相 ...

5
バブル体験の有無が価値観の差~70年代生まれと80年代生まれの価値観にみる世代ギャップ~

上司が、部下に的確に仕事をしてもらうために知っておくべきこと 「今の若いものは、 ...

 - コンサル/IT業界, 金融業界