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海外M&Aを展開し続ける電通

 

office-1121869_960_720電通は2016年12月期、海外でのM&Aに500億円を投じる方針です。成長領域と位置づけるインターネット広告などデジタル関連企業を中心に買収し、海外での収益力を高めます。主な買収先対象はインターネット広告やデータ解析、デジタルマーケティングといったデジタル事業を手掛ける企業です。現在の主要市場、欧米だけでなく、アジアや南米など幅広い地域で現地企業の買収を計画します。

同社は13年4月から15年12月までの間、計1000億円超を投じ、海外で76件のM&Aを実施してきました。海外M&Aを加速し、17年12月期の連結決算(国際会計基準)では売上総利益に占める海外事業の構成比を55%以上に引き上げる狙いです。

電通の海外展開

hands-1063442_960_720急速に海外展開を進める電通の基本戦略はM&Aです。2012年は3社に留まっていた買収(または株式取得による経営権獲得)の案件数は13年には12社、14年には15社、15年では21社と、年々加速させて規模も拡大させています。以下はその案件の一部です。

  • 2012年

・ブラジルの独立系DA(デジタルエージェンシー)「ラブ社」買収

・カナダの広告会社「ボス社」買収と電通カナダとの統合

・インドのCA(クリエイティブ・エージェンシー)「タプルート社」の株式51%取得で合意

  • 2013年

・米国の独立系PR会社「ミッチェル・コミュニケーション・グループ」買収

・タイのブランド・コンサルティング会社「ブランドスケープ社」買収

・ルーマニアのDA「キネクト社」を買収

・中国のデジタルCA「トリオ社」を100%買収

  • 2014年

・中国のソーシャルCA「ベラウォム社」株式100%取得で合意

・フランスのモバイル・エージェンシー「レ・モビリザーズ社」の株式100%取得で合意

・ブラジルの独立系最大規模の総合広告会社「NBS」の株式70%取得で合意

・カザフスタンの広告会社グループ「フィフティー・フォー・メディア社」株式51%を取得で合意

・インド最大のOOH専門の広告会社「マイルストーン社」の株式51%取得で合意

・米国のデジタル・マーケティング・エージェンシー「ロケット・インタラクティブ社」の株式100%取得で合意

  • 2015年

・インドの総合DA「WATコンサルト社」株式100%取得で合意

・イスラエルのDA「アバガダ・インターネット社」株式100%取得で合意

・米国のスポーツエージェンシー「アスリーツ・ファースト社」持分33.3%取得で合意

・シンガポールのCA「マンガム・ギャクシオーラ社」株式20%を取得

・ガーナのメディアエージェンシー2社を買収

・フランスのCARBS「セイム・セイム社」株式100%取得で合意

これらのM&Aにより、電通の海外ネットワークは124カ国300拠点、売上総利益6769億円、海外グループ従業員4万300人の規模にまで拡大しています(2014年度実績)。

そして2015年度上半期の売上総利益は、国内46.2%に対して海外比率は53.8%と、すでに売上総利益の半分以上を海外で稼ぐまでになっています。またその地域分布も欧州・中東・アフリカ19.8%、アジア太平洋14.6%、米州19.4%と、地域的なポートフォリオもバランスを取っています。

しかし、日本の広告市場のシェアの25%と圧倒的な強さを誇る電通も世界では売上高5位(60億ドル)。世界のエージェンシー・グループでの売上総利益では、ジェイ・ウォルター・トンプソン、オグルヴィ・アンド・メイザーなどを傘下に置くWPPグループ(189億ドル)、オムニコム(153億ドル)、ピュブリシス(96億ドル)、インターパブリック(75億ドル)に次ぐ規模です。

日本の広告市場は、最近の景気回復のトレンドに伴って回復基調に戻りつつあるものの、長期的には人口減や経済成長率の低下などにより頭打ちになると予測されています。そのような環境下で成長を維持するには、海外マーケットに活路を求めることは必然です。

そして、急速に進むグローバル化の流れの中で規模の大きな先進国と成長著しい後進国のビジネスを同時に取り込むためには、自前で拠点を築くよりもM&Aによって時間・ノウハウ・スタッフといった「ソフト」を買うことが得策と判断したのです。世界のトップ・エージェンシーがM&Aを重ねてグローバル展開をはかり規模を拡大してきたことも、電通のロールモデルになっているようです。

電通のM&A戦略を可能にしているのは、世界第2位の規模を誇る日本の広告マーケットの25%を占める収益力です。1兆円を超える純資産と高い信用格付けによる資金調達力による潤沢な資金がバックグラウンドにあることは、電通の最大の強みです。

以上、日本経済新聞とZUU onlineより要約引用しました。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO98576990X10C16A3DTA000/

https://zuuonline.com/archives/93512

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